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院長日誌

  • 矯正歯科長期安定とは何か?

    12月15日、東京 アキバプラザにて、第2回 矯正歯科長期安定研究会が開催され、講演を頼まれていましたので、行ってきました。
    この記事は非常に長文になりますので、勉強したい人だけ読んで頂ければ幸いです。

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    矯正治療を希望する患者さんは、気になるところ、治したいところもさまざまで、要求の度合いも人によって異なります。
    年齢は、ひろ矯正歯科に初診相談で来られた方で、最も幼い患者さんは 1才未満、最高齢は 70才超です。
    一人一人、症状も違えば、治療方法も異なります。
    よく「オーダーメイド矯正」とか、「オーダーメイド治療」とか書いている医療機関がありますが、医療はオーダーメイドが当たり前のことで、年齢も違えば、歯の位置、形、大きさ、骨の大きさや厚み、骨のバランス、歯列の幅や習癖も一人一人異なりますので、詳しく検査を行い、長年の経験に基づいて診断を行い、一人一人、その患者さんに最適の治療法、最も安定するであろう方法を立案し、治療するわけです。
    ひろ矯正歯科では、治療開始された患者さんの殆どは、非常に熱心に治療を受けてくださり、歯磨きなどもお教えしたとおりに行ってくれています。
    そういった患者さんの理解と協力があるからこそ、素晴らしい治療結果を得ることが出来ます。

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    その双方の努力の結果得ることが出来た治療後の素晴らしい歯並びを維持してゆくためには、装置を外した後、「保定」が必要です。
    保定をしなければ、歯並びは乱れ、治療前の状態に戻ったり、或いは治療前とは違った不正な状態になってしまうことがわかっています。

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    保定装置は、一般的には、上顎には入れ歯のような保定装置(Wraparound type)、下顎には細いワイヤーを接着(Fixed)し、2年間で保定終了してしまう医療機関が多いのですが、2年で保定をやめたら、歯並びは絶対に悪くなります。

    それがわかっているのに、何故 2年で保定を終了してしまう医療機関が多いのか?
    キリが無いからです。
    患者さんのためではなく、医院のため自分のために線を引く、つまり 2年で終わりにしてしまわないと、保定の患者さんがどんどん増え続け、治療中の患者さんを診る時間がなくなってしまうから、患者さんのことよりも、自分のことを考えているわけです。
    なので、保定期間は 2年として、2年経ったら保定を終了して、一旦サヨウナラをする。
    そうすると、必ず不正な状態になりますので、何年後かに不正咬合に戻ってしまったと言って来院されたら、「あ〜、再治療が必要ですね」と言って、再検査、再診断、再治療となり、費用も再度請求する医療機関が多いです。

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    でも、これは患者さんにとっては悲しいことで、大金を払って、何年も通って、折角綺麗になった歯ならびが乱れてしまったら、何のために治療をしたのかわからなくなります。
    なので、ひろ矯正歯科では、最低 3年間の保定を行い、3年目に保定を継続するか、外すかの判断を御自身でして頂いています。

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    どうして 2年でなくて 3年なのか、、2年では不十分だけど、3年なら大丈夫なのか?
    違います。
    3年でも不十分です。
    じゃあ、何故、3年なのか?
    それは、2年〜2年半経過した時点で、保定装置を外したら不正な状態になってしまうということを御説明し、半年間は患者さん御自身に考えて頂く期間として設けています。

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    また、ひろ矯正歯科では、保定装置は一般的に使われている、入れ歯のようなものは使わずに、上下前歯部の裏側に細いワイヤーを専用の接着剤で付けて行いますので、人からは見えないし、異物感も殆ど無し、ワイヤーが付いた状態でフロスや歯間ブラシも使う事が出来ますので、虫歯になる心配もありません。

    一般的に使われいる保定装置

    ワイヤーが見え、喋りにくく、食事の時はいちいち外さないといけない、使うのを怠ると不正咬合再発です。

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    ひろ矯正歯科で使用している保定装置

    上下とも見えない、違和感も少ない、後戻りのリスクも少ないです。

    ワイヤーが付いている部分もフロスを使う事が出来ます。

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    よく、「このワイヤー、外さないと虫歯になるよ」、とか、「歯周病になるよ」と言う一般歯科医や歯科衛生士がいますが、それはその歯科医師・歯科衛生士の勉強不足、認識不足です。
    ひろ矯正歯科の患者さんの殆どは、今の綺麗な歯並びを維持していきたいので保定のワイヤーは外したくない、と希望されており、長期保定している人は 20年、30年という方が非常にたくさんいらっしゃいます。
    治療終了後 3年間は 6ヶ月に 1度、歯並びのチェック、ワイヤーと接着剤のチェック、歯石や歯磨きなど、お口の状態のチェックに来て頂き、3年以上継続される方は、その後は 3年に 1度 来院して頂いています。
    医療機関によっては、矯正の治療代とは別に保定料を請求するところもありますが、ひろ矯正歯科では、保定は治療代の中に含まれ、別料金ということもありませんし、長期保定に関しても追加料金というのもなく、観察料のみで保定延長することが可能です。

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    今回の矯正歯科長期安定研究会(以下LTSOA)は、その名のとおり矯正治療後の「長期安定」について考える会なのですが、そもそも、「安定」とは、何でしょうか?
    殆どの歯科医師や矯正専門医は、下顎前歯部の凸凹が無ければ安定している、凸凹が出てしまったら安定しなかった、と思っています。
    この日の他の演者の先生達も、そして参加されている先生の大多数は そう思っているように感じました。

    しかしながら、不正咬合には、上顎前突、下顎前突、顎変形、開咬、空隙歯列等々があり、非常に良好な治療結果を得たにもかかわらず、何年後かに上顎前突が戻ってしまった、開咬が戻ってしまった、正中離開が戻ってしまった、これは安定しているとは言えないわけです(※1)
    ですので、私は、この点を含めて、長期安定とは何か、長期に安定するにはどうするのが良いかプレゼンし、私の考えはお伝えする事が出来たかなと思います。

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    プレゼンでは、まずは、症例を見て頂きました。

    臨床家である以上、きちんと治っていなければ話にならないからです。

    今回使用した症例は全てリンガル、舌側矯正で治療した症例で、年代順に出しましたので、治療結果の良いものだけを選んで出したわけでもなければ、経過の良いものだけを出したわけではありません。

    これらの症例は20年以上前に治療した症例ですので、ブラケットは大きくてバルキーな Kurz Applianceを使っていますが、現在ひろ矯正歯科で使用しているリンガルブラケットは、オリジナルの Mienai bracket、小型で薄いもので、快適にリンガルの治療を受けて頂けます。

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    症例 1

    治療前 叢生が著しい、4本抜歯症例です。

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    治療中

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    治療後

    治療期間は 2年 7ヶ月でした。

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    治療終了後 24年です。

    抜歯空隙が開くこともなく、よく安定しています。

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    症例 2

    治療前 叢生と口元の突出が主訴です。

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    治療中 主訴を改善するためには 4本の抜歯が必要となりました。

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    治療後

    治療期間は 2年 5ヶ月でした。

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    治療終了後 23年です。

    治療後の良好な状態を維持しています。

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    症例 3

    治療前 著しい叢生です。

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    治療中 診断の結果、非抜歯で治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 6ヶ月でした。

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    治療終了後 23年です。

    下顎正中に少し隙間が空いています。

    リテーナーが外れたまま放置されたのが原因です。

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    治療終了後 18年の時には見られなかったものです。

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    症例 4

    治療前 凸凹は僅かですが、上下顎前突で、口元が著しく突出している方です。

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    治療中 口元を引っこめるため、4本抜歯を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 11ヶ月でした。

    主訴はバッチリ改善されました。

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    治療終了後 23年です。

    前歯の噛み合わせの深さが若干深くなってきていますが、後戻りはなく、安定した状態を示しています。

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    症例 5

    治療前 著しい叢生です。

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    治療中 3本抜歯で治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 3年 4ヶ月と、少し長期を要しました。

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    治療終了後 22年です。

    奥歯のズレも後戻りはなく、安定した状態を示しています。

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    症例 6

    治療前 上顎前突です。

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    治療中 叢生と上下前歯をひっこめるために 4本抜歯を行い、治療しました。

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    治療後

    治療期間は 2年  6ヶ月でした。

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    治療終了後 22年

    前歯の噛み合わせの深さが少し深くなってきていますが、これは下顎臼歯の補綴をやり直した歯科医師の治療が原因です(高径不足)。

    抜歯空隙が開くこともなく、安定した状態を示しています。

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    症例 7

    治療前 著しい叢生を伴う上顎前突です。

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    治療中 4本抜歯を行い治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 8ヶ月でした。

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    治療終了後 21年です。

    右上 1の被せ物が気になりますが、上顎前突が戻る事無く安定した咬合を示しています。

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    症例 8(日矯専門医試験に提出した症例です)

    治療前 著しい叢生を伴う上下顎前突です。

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    治療中 主訴改善のために 4本抜歯を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 3ヶ月でした。

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    治療終了後 21年です。

    抜歯空隙が開くこともなく、安定した状態を示しています。

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    症例 9

    治療前 著しい叢生を伴う開咬です。

    開咬は治療後安定せず、再発する事が非常に多いです。

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    治療中 3本抜歯で治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 8ヶ月でした。

    開咬でしたので、Over Tx.を行い、Overbiteは深く仕上げました。

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    治療終了後 21年

    開咬が再発することなく、非常に安定した咬合を呈しています。

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    症例 10

    治療前

    前歯の噛み合わせが深く、下顎前歯が見えません。

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    治療中 診断の結果、非抜歯で治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 1年 8ヶ月でした。

    ちょうど良い状態で終わるとすぐに噛み合わせが深くなってしまいますので、長期安定のために前歯が噛めないくらい浅く仕上げました(Over treatment)。

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    治療終了後 20年

    あれだけの Over Tx.を行ったにもかかわらず、前歯の噛み合わせが深くなってきています。

    まあ、治療後 20年ですから十分安定していると言えますが。

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    症例 11

    治療前 著しい叢生を伴う Skeletal 3です。

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    治療中 左上 1本のみ抜歯して治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 1年 9ヶ月でした。

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    治療終了後 20年

    3級が戻ること無く非常に良好な状態を維持しています。

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    症例 12

    治療前 著しい開咬です。

    症例 9でも書きましたが、開咬は治療後に再発することが多く、最も安定の悪い不正咬合の 1つです。

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    治療中 上顎 2本抜歯で治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 11ヶ月でした。

    開咬は再発せずに安定してくれるでしょうか、、。

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    治療終了後 19年

    開咬は再発せず、バッチリ安定した状態を維持しています。

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    上下前歯の凸凹など、審美的に患者さんが特に気にされる部分は、保定無しに長期安定は無理、長期保定が必要、しかも、長期保定は可撤式では無く、接着式の物がベスト、と考えますので、ひろ矯正歯科では、上下前歯の裏側に細いワイヤーを接着して、長期保定を行っています。

    アメリカでは、保定が無くても長期安定するという報告があり、特に、以下のの2つは非常に有名かつ臨床経験も豊富な先生です。

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    The Alexander Discipline Vol.2:Long-term stability, R.G. “Wick” Alexander, Quintessence, Chicago, USA, 2011.

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    James L. Vaden, Long-term stability -It begins with the treatment plan, Seminars in Orthodontics, Vol 23(2), 149-165, 2017.

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    この先生達は、保定が無くても長期安定すると報告しているのに、何故、ひろ矯正歯科では長期保定をするのか、、。
    患者さんをキープしておきたいからか?
    違います。

    保定の患者さんがどんどん増えたら、困るのは私自身です。
    2,200円、或いは 3,000円のチェック料が欲しいからか?
    これも違います。
    保定中に来院された患者さんを噛み合わせのチェックとリテーナーチェックするだけではなくて、30分、40分かけて、歯石を取り、歯の汚れなどをクリーニングし、虫歯のチェック、歯周病のチェックや、親不知のチェックなどをする、これだけで、3〜4万円のコストがかかりますので、医院としては保定の患者さんが来院される度に大赤字です。

    なのに、保定料金も取らず、切れたり外れたりしていても追加料金などは一切貰わずに診療しているのは何故か?

    患者さんのため、つまり、Volunteerで行っています。

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    講演では、さらに、

    • 下顎の犬歯間幅径を拡大してはいけない
    • 咬合平面を変えてはいけない
    • 過蓋咬合を治療するときには、臼歯を挺出させて治してはいけない、前歯を圧下しろ
    等々、矯正学の基本原則についてもお話ししました。

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    まずは犬歯間幅径について。

    例えばこの症例

    下顎犬歯の位置は赤いドットです。

    下顎犬歯は近心に傾斜し、歯列弓から blocked outしています。

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    治療後です。

    下顎犬歯の位置は抜歯空隙に向かって遠心移動され、歯列弓は放物線状しているため、犬歯間幅径は当然拡大します。

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    下顎犬歯間幅径は治療前の 24mmが 29mmに「増加」していますが、これは拡大したのではありません。

    でも Dr. Alexanderは、これもダメだと言いましたが、それは彼の間違いです。

    治療前の 24mmを維持したまま治療を行うには、下顎前歯の抜歯をしない限り不可能です。

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    もう1症例

    著しい叢生で、下顎犬歯の位置も不正です。

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    治療後です。

    4番抜歯で、抜歯空隙に向かって犬歯は遠心移動しました。

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    歯列弓は放物線状しているため、下顎犬歯が遠心移動すると、当然ながら犬歯間幅径は増加します。

    犬歯間幅径は治療前の 20.1mmが 26.5mmに「増加」していますが、これは拡大したのではありません。

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    もう1症例

    治療前です。

    この状態であれば、99.9%の矯正専門医は前に出ている2本を抜くか、舌側に飛び出している2本を抜く思いますが、私は歯根吸収とか歯冠崩壊とかがない限り 6前歯は抜きませんので、4番を抜いて治療しました。

    下顎犬歯は4番の位置に移動します。

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    治療後です。下顎犬歯は遠心移動しました。

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    犬歯間幅径は治療前の 19.7mmが 31.7mmに「増加」していますが、これは拡大したのではありません。犬歯を遠心に、4の位置に移動したら、犬歯間幅径は増加するのは当然です。

    これらの症例も全てリンガルで治療を行っています。

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    何故、日本の矯正専門医は、長期安定に苦労しているのか?
    日本のドクターが下手だからか?
    違います。
    私は世界中の矯正専門医の治療を見て来ていますが、GP(一般歯科)は兎も角として、日本矯正歯科学会専門医(日本歯科専門医機構認定の矯正歯科専門医)のレベルは間違い無く世界1です。
    なのになぜ、日本の矯正専門医は、長期安定に苦労しているのか。
    まず、白人と日本人は症例の難易度が違います。
    日本人と白人の治療前の状態を比べて見ると、白人の殆どは、恐ろしく簡単なケースで、日本人のような物凄い八重歯、物凄い叢生、というのは稀です。
    日本人と白人は、叢生の度合いも違えば、骨格も違う、歯の大きさ、歯の形、舌の大きさも違えば、代謝も違う。
    なので、アメリカでまかり通っていることが、そのまま日本で通用しないんじゃないかな、と思いますので、そのことも講演の中に盛り込み、説明しました。

    Alexander先生が間違っているのは、彼が悪いのでは無く、白人にはこのような症例が無いために、アメリカの矯正専門医には下顎犬歯間幅径が増加するということが理解出来なくても仕方が無いと思います。

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    さらに、矯正した人もしていない人も、歳と共に歯並びが悪くなるのは何故なのか、そのメカニズムは何か、これについても私の考えを説明しました。
    私たち矯正専門医が埋伏智歯の抜歯を依頼するのは、親不知が歯並びを悪くするから、だから矯正歯科医は親不知を抜きたがるのだと思っている人が非常に多いです。
    ですので、埋伏智歯の抜歯は 17歳以上で無いと保険外という極めて医学的根拠に基づかない「常識」がまかり通っています。
    成人の患者さんでも、親不知の抜歯を依頼するときには、「矯正治療とは関係ありません」の文言を添えなければ、保険外となります。
    しかしながら、親不知は前歯部の叢生の後戻りとは関係ないという研究結果があります。

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    The effect of Third Molars on the Mandibular Anterior Crowding Relapse -A Systematic review, Ioannis Lyros, Georgios Vasoglou, et al, Dent. J.11(5), 131-, 2023. https://doi.org/10.3390/dj11050131

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    歳と共に歯並びが悪くなるのは何故か、私の考えは、以下のとおりです(※2)
    つまり、奥歯は解剖学的に少し手前に傾いた形をしています。

    ここに毎日60kg近い咬合力が1日数千回もかかり、また寝ている時にも食いしばりで、それと同等か、或いはそれ以上の力がかかります。
    そうすると、どうゆうことが起こるか。

    臼歯は近心傾斜します。
    この臼歯を近心に押す力は、臼歯よりも前方の歯を近心に押します。

    その結果、臼歯より前方の歯は押されて、デコボコが出て来ます。

    それだけでなく、咬合力で臼歯が近心傾斜すると、臼歯の高径は低くなります。
    臼歯の高径が低くなると、下顎前歯は上顎前歯と干渉してきます。
    その結果、下顎前歯には叢生が出来、上顎前歯はすきっ歯になってきます。
    これが矯正をした人もしていない人も、加齢と共にだんだん歯並びが悪くなってくる理由です。

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    では、臼歯を直立させたらどうなるか。

    臼歯の辺縁隆線にはステップがつき、コンタクトは緩くなりますので、叢生予防目的で行うことはお薦め出来ません。

    この症例のように、外科的矯正治療を避けるためであれば OKだと思います。

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    なので、綺麗な歯並びを維持してゆくためには、何かしらの保定が必要です。
    一番良いのは、一般歯科でナイトガードを作って貰い(保険で出来ます)、きちんと咬合調整されたナイトガードを毎日就寝時にしようすること、これは矯正をした人もしていない人も、です。
    矯正をした人は、ナイトガードを就寝時のみ使用するのでは不十分ですので、前歯の舌側に細いワイヤーで保定してやることが必要、ということです。

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    Conclusionとして、「矯正歯科の長期安定」は、下顎前歯の叢生だけではない、出っ歯の治療が出っ歯に戻らずに安定していること、受け口の治療が受け口にならずに安定していること、開咬の治療後に開咬が再発せず安定すること、などなど、そのためにはどうするのが良いか、などなどを理解していただくために、以下のようにまとめました。
    「と思う」とか、「気がする」と書いたのは、私の私見で、今回は文献などを示していないためです。

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    1. Deep biteを極端に浅く仕上げる:必ず必要だが、著しい Brachyでは、だんだん深くなってきてしまう傾向があるので、Fixed retainerに加え、就寝時には きちんと咬合調整された上顎型ナイトガードを併用することが望ましいと思う。クリアーリテーナーやアライナーは、臼歯の離開を招くので逆効果。Over treatmentで edge to edgeに仕上げると、ずっと その状態を維持している症例があるので、E-Eは良くない。1×1mmくらいに仕上げるのが良いと思う。

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    2. Large overjetを edge to edgeで仕上げる(C/2をC/3に):これは必要だと思う。ずっと E-Eで変わらない患者さんもいるが、習癖、態癖関与している患者さんでは、あまり有効で無いこともある。

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    3. Open biteを深く仕上げる:舌癖関与の未成年患者では、深く仕上げても開咬が再発するが、深く仕上げることは必要だと思う。成人のほうが予後良好で、特に リンガルでの治療は開咬の治療に対して非常に有効であるように思う。

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    4. 反対咬合症例を上顎前突で仕上げる(C/3をC/2に):有効かつ必要。Growth control を行って治療終了した C/3症例は、そうでない症例に比べて、予後良好だと思う。成人の camouflage treatmentは長期安定せずに再治療になることが多いように思う。

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    5. 捻転歯の Over correction:あまり有効とは言えないと思う。

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    6. 捻転歯の Septotomy:あまり有効とは言えないと思う。(患者さんを苦しめるだけで、効果が実感できない)。

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    7. Midlineの Over correction:徐々に戻って、on lineで落ち着く症例もあるが、ずっとズレが残る場合があるので、Brace off時にはキッチリ合わせたほうが良いと思う。

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    8. 上顎2など、舌側転位歯の Over correction:一旦唇側に振ってから戻すover treatmentは過去に何度か行ったが、それでも戻ってしまう症例が多いように思う。Torque controlは絶対必要。

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    9. 上顎正中離開:絶対に永久保定が必要。正中の歯肉線維の切断は必ず行う。

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    10. 埋伏智歯の抜歯:叢生発現とは関係が無いとしても、7を守るために抜歯は必要。

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    11. Ext caseの方が Non-ext caseよりも治療後の安定が良い?:そんな気がする、、、。だから extした方が良い、ということではないです。

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    12. Labialよりも Lingualの方が長期安定している症例が多い?:そんな気がする。

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    と締めくくって、講演を終えました。

    今回のプレゼンは 1ヶ月以上前から、毎朝 4時 5時に起きて診療室に向かい、診療の始まる 10時までプレゼン準備、診療が終わってからも毎晩居残って、家族の晩御飯タイムの 20時まで準備して、完成したのが発表前日の 12/14日土曜日の深夜。
    30分間という超ショートレクチャーで、自分の言いたいことをまとめるのは本当に大変だったけど、長期保定の必要性や犬歯間幅径の問題などについての私の考えだけでなく、私が行っているリンガルの治療のレベルを御覧頂けたと思います。

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    講演が終わったら、会場内の GPの先生から質問が。
    「長期安定研究会」なのに、何故 fixedが入っているのか、それでは長期安定とは言えないじゃないか、とのこと。
    上記、※1, 2について説明した筈なんですが、リテーナーしか見ていなかったのかな、、これ以上説明しても GPの先生に理解して貰うことは無理か、、それとも、私のプレゼンがいけなくて理解して貰えなかったのか、、。

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    翌日、私の講演を SNSで誹謗中傷する者 (youtuber?  influencer?)が出て来ました。
    人それぞれ、考えている事も違うし、捉え方も違いますので、別に私のプレゼンをどう思うかは自由ですが、会場で Discussionせずに SNSで、しかも公開限定なしの worldwideで個人批判を書くというのは、常識的にどうかと思います(まあ、youtuberとか  influencerってのはそうゆうもんだと思いますが)。
    この influencerは、筒井先生の「年をとるということは壊れていくこと」というお言葉に感動したらしく「金言」と書いていますが、でも皆さん、考えてみてください。
    例えば、家でも車でも電化製品でも、長年使っていれば壊れて来ますので、歯だって歳と共に悪くなりますし、歯並びだって経年的に悪くなってくるのは当たり前のことなんです(※2で説明しました)。
    この influencerは、「長期安定には長期保定が必要というのが共通した意見とすれば、僕はそこに挑戦したいですね。」と書いていますが(^^;)、経年的に下顎前歯に叢生が出来るメカニズムを説明した筈ですが、、日矯認定医も持っていない先生に理解して貰うのは無理か、、。

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    経年的に下顎前歯に叢生が出来ないようにする方法は無いのか?

    それは 1つだけあります。
    「噛まないこと」です。
    食事は全て流動食で、「噛む」ということを一切しない。

    寝るときも口を開いて寝る。
    起きているときも寝ている時も、上顎の歯と下顎の歯が当たらない様にする。

    そうすれば死ぬまで綺麗な歯並びでいられる筈です。

    でも、そんなことは不可能ですから、私は上下前歯に Fixedを入れて、審美的にも機能的にも重要な部分を長期きれいに保って、患者さんに喜んで頂けるようにしているわけです。

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    この influencerの FBの投稿に対し、LTSOAの役員の先生方がみんな何一つ反論さえせずに「イイネ」しているのを見て、呆れました。

    「方法論が違う」んじゃなくて、この先生達も ※1,2をわかっていないということです。

    私の考えている事は、この先生達と違うと思いますので、この研究会は退会しました。

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    今年もあと10日です。
    来年の皆様の御健康と御多幸をお祈り申し上げます。

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    P.S.

    会場では、ひろ先生、って声をかけてくれた先生が、、誰かと思えば、1990年に Tucsonで #62 Tweed courseを受けた時の同期生、ひだ先生とふくい先生じゃないですか!
    ビックリ!

    この先生達、凄かったんですよ、めっちゃ凄い!

    完全に負けました。

    懐かしいですね。

    お二人とも当時と変わらず、若くてお美しいままで、感激しました。

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    会場には私専用の控え室を用意してくださり、感激でした。

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    JLOAの先生達が一緒に写真を撮ってくれと、いらっしゃいました。

    なんでだろう〜(^^;)

    こわ〜い、、(^^;)
    JLOAは開業当時入会し、毎年参加してきましたが、退会しました。

    なんでだろう〜、、。

    でも、こうやって来てくださると、嬉しいです。

    先生方、リンガルは矯正歯科で最高峰、最も難しいテクニックです。

    先生達は、若い先生達の指導をし、お手本とならなければならない存在です。

    自分は Lingual orthodontistだという誇りを持って、ハイブリッドリンガルなどという、アレな治療はヤメてください。

    アライナーやインビザは マルチブラケットが出来ない 歯科医師にやらせておけば良いです。

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