昨年、France ReimsでのCEO学会に招かれた時に、Paris Vの教授であるDr.Deckerから、2012年の4月に Toulouseに来てくれないか、と言われました。
聞いてみると、フランスの全ての大学の歯学部の卒業後の矯正専門医を目指しているドクター達のためのスペシャルカリキュラムで、4月19日から1週間とのこと。
往復を含めると10日間も ひろ矯正歯科を閉めないといけないので、正直、キビシイな〜と思っていたのですが、日本人がインストラクターとして招かれるのは前代未聞、Paris Vの facultyでもない人間が招かれることなどあり得ない事ですので、身に余る光栄、名誉なお話しですし、しかも Alainのオファーとなれば、ますます断るわけにはいきませんので、行ってきました。
Toulouseの美しい街並み
今だからこそ書かけますが、今回のこの準備がまた、滅茶苦茶大変でした。
毎日30-45分間の講演を朝夕1回づつ、さらに最終日には大ホールで 2時間半の講演、さらに連日舌側矯正のタイポドントの指導とのことで、タイポドントのメタルティース、ワックスフォームを発注し、ブラケットをヒロシステムで正確にボンディングし、ステップ毎の写真を撮りながらダンキング。
Typodontは、日月の休み返上で朝から夜中1時2時までかけて準備し、講演のための準備はといえば、毎朝5時に起きて準備をしました。
ひととおり終わったところで、デジカメのデーターをPCに取り込んでみると、、NIKONのデジカメの書き込みエラーで、画像がクラッシュ、、、最初からもう一度やりなおし、、とほほ。
大学に勤務しているドクターなら、いくらでも準備の時間が取れるのでしょうが、私はいつもどおり朝から晩まで診療に追われ、夜はグロッキーです。
連日の Over workで体調不良、不整脈と吐き気の毎日でしたが、なんとか無事にミッションを遂行してきました。
4月14日、現地到着
Toulouseの Paul Sabatier大学の教授、Lingual Jetで知られる Dr.Pascal Baronが空港まで迎えに来てくれました。
その夜は庁舎の前のレストランに招待してくれました。
御馳走様でした!
Pascalと食事のあと、Capitole à Toulouseをバックに
15日日曜日はフリーなので、Pascal が市内観光と博物館に連れて行ってくれました。
マルシェにて。肉、野菜、パン、お酒、、、売っていない物はありません。
街の建物は殆どみんな赤煉瓦で出来ているのが Toulouseの特徴だそうです。
Toulouseはエアバスの工場がある街で、それゆえに ToulouseにはTGVが走っていないのだそうです。
なるほど、、。
16日、月曜日の朝、地下鉄で Université Paul Sabatier(以下UPS)に向かいます。
ものすごい広大なキャンパスで、端から端までは地下鉄で一駅あり、とても歩いては行けないほどの大きさです。
キャンパスの反対側の丘の上には、ものすごく大きな病院が、、。
シャルルドゴールも見渡す限りの大空港ですが、必要な物にはきちんと割り振る、お金も時間もかける、というのがフランス流のようです。
UPSの歯学部に着くと、物凄い数の受講生です。
フランスの大学は全て国立大学で、全16校、歯学部は15校にあるそうです。
今回のこのコースには、フランス全土だけでなく、モロッコなどの近隣諸国からも受講生が来ていました。
フランスで歯科医師になるには、通常、6年間の歯学教育を受けたあと、国家試験だそうで、これは日本と同じです。
ところが、例えば口腔外科や矯正歯科などの専門医を志願すれば、6年が5年になり、その代わり専門教育を3年間受けなければならないとのことで、合計8年間の教育となります。
今回参加している人達はみんな歯科医師国家試験に通った後の歯科医師です。
日本にも専門医制度はありますが、日本は歯科医師免許があれば誰が何をやってもOK、出来ようが出来まいが、全て歯科医師個人が自分の判断で行う事が許される。
特に矯正歯科は、基本的知識の全くない歯科医師が、自費収入目当てで とんでもない治療を行って取り返しのつかないことになり、患者さんが専門医のところに泣きついてくるという事例が後を絶ちません。
先日、うちに初診で来られた患者さんは、上の歯列も下の歯列も、目を覆いたくなるほど拡大されており、臼歯部では歯根が骨から飛び出し、歯肉の退縮を起こしている。
話を聞くと、小さい頃から某市内の一般歯科でアゴを広げなければダメだと言われ、言われるとおりに矯正治療を開始、もう10年近くも治療に通っているが、奥歯は噛みあっていないわ、隙間は開いているわ、正中線は合っていないわ、全然終わる気配がないので、心配になって相談に来た、とのことでした。
水平埋伏智歯の抜歯などの観血処置は、知識と技術不足を認めて手を付けずに病院に紹介する、でも、矯正歯科治療に関しては、「血が出ない」から、知識も技術もないのに手を付けるという歯科医師が多いです。
そしてその殆どは、矯正歯科学のイロハも知らない、レントゲンの分析もトレースも出来ない、治療内容はといえば、片っ端から側方拡大し、患者さん固有の骨の幅も顔の幅も関係なし。
そんな歯医者では、矯正費用も専門医に比べると法外な設定をしていることが多いです。
医療というものは、何処でどんな治療を受けるかは、最終的には患者さん自身が決めることですが、取り返しのつかない事になる前に信頼できる専門医にかかられる事をお勧めします。
話しをUPSに戻します。
講義の最中は、みんな真剣です。
寝ている人など一人もいません。
その上、フランス人は、結構時間にキッチリとしています。
外国では、first name で呼ぶのが一般的で、アメリカでもヨーロッパでも、学生が先生にむかってfirst name を呼び捨てで呼ぶ光景をよく見ます。
正直、カッコイイな、と憧れてしまいますが、フランスは少し違って、上下関係がきちんとしています。
例えば、“あなた”は、英語では “you”、相手が赤ん坊であろうが大統領であろうが “you”ですが、フランスでは、目上の人に対しては “vous”、親しい相手や自分と同等の立場の人に対しては “tu”です。
教わる立場の人間が、指導者に対して食ってかかるなどということはあり得ないことで、滞在中、僕のところに質問にくる人達はみなとても礼儀正しかったのが印象的でした。
level 4の人達は総勢 80名ほどで、2部屋に別れて行いました。
僕自身は、ただの田舎の矯正歯科医だと思っているのですが、みんなは僕のことをスーパースターだとかアイドルだと言ってくれ、一緒に写真を撮ってくれと頼まれます。
C. H. Tweedと一緒に写真を撮っているのと同じだわ、などと言う人までいて、嬉しいやら、照れくさいやら、、。
僕は自分の事そんなふうに思っていないんですが、、。
Dr.Pascal Baron
19日の木曜日、大ホールで level 3と level 4のドクター達を相手に2時間の講演です。
舌側矯正の特徴や落とし穴、Hiro systemの製作手順やclinical video等々。
2時間は長いようですが、実際にはアッと言う間です。
みなさん理解して頂けたでしょうか?
講演を終えると、物凄い拍手喝采。
Reimsの時と同じ、拍手が鳴り止みません。
拍手喝采に応えて一言述べますが、嬉しすぎて危うく泣いてしまうところでした。
準備は大変だったけど、やって良かったなあ、と思います。
President 夫妻から記念品を頂きました。
その後、タクシーでAlainと空港に、Parisに向かいます。
車中で Alainがものすごく良かった、great successfulだと絶賛してくれました。
Parisでは、大学病院の近くのゴージャスな Hotelを用意してくれてあり、その日の晩御飯は、有名な生牡蠣専門のレストランに連れて行ってくれました。
たいへん高級なお店で、シャンパンに、高級な白ワインに、何種類もの生牡蠣を一体何個食べたでしょうか、僕が牡蠣が大好きなので、Alainが予約してくれたのでした。
ありがとう、Alain!
翌日20日の金曜日は、パリ大学の矯正歯科の教授や先生達を相手に、午前中は講演、午後は実際の患者さんに Hiro systemでの bondingを説明、紹介しました。
お洒落な部屋ですね、、。
この準備も大変でした。
どうせならHiro systemで実際の患者さんにbondingして、どれだけ正確に付くか、coreが如何に簡単に取れるかを体感してみてはどうだ、と提案したのが1ヶ月前。
Lionelから患者さんの模型が届いたのが、1週間前。
成田の税関から「海外技工物か?」との電話がありましたが、技工物を作るのは僕で、海外で作られたものを輸入しているのではない、と事情を説明すると即OKで、送ってくれましたが、、、製作まで日数がない。
技工士の川端下君と松崎君が超特急で作ってくれました。
お昼御飯は他の先生達も一緒にAlain達と近くのレストランでステーキを頂きましたが、これがまた美味しかった、、。
その後大学病院に戻り、実際の患者さんに上下顎、リンガルの装置を装着しました。
午前中の説明をもっと詳しく、、。
教える方も教わる方も、真剣です。
ボンディングする際のキモの部分や、ワイヤーセットの際の注意点、形状記憶合金ワイヤーの曲げ方等々。
患者さんは大変疲れたでしょうが、愚痴を言うどころか、凄く感謝してくれ、僕にも丁重に挨拶をしてお帰りになりました。
僕も疲れました、、。
Germainと
Marie-Pierreと
Alainと
その夜は、Alainがまたもや高級レストランに連れて行ってくれました。
ここでもシャンパンに、白ワインに、生牡蠣に、、。
ありがとう、Alain、御馳走さま。
21日の土曜日は帰る日です。
朝からモンマルトルの広場に絵を買いに行きたいんだ、というお願いを聞いてくれて、Alainの車で向かいます。
広場でお目当ての peintreを捜します、、。
やった! いた!!
僕はどんな有名な画家の絵よりも、彼の絵が好きです。
この日は、スーツケースほどの大きいのを1枚、縦長のを1枚。
すると小さいのを1枚おまけにつけてくれました。
Alainも気に入ったようで、1枚買っていました。
成田到着は日曜の朝、翌日の月曜日は出掛ける用事があり、休む暇も無く火曜日からいつもどおりのフル活動です。
そろそろESLOの準備をしないと間に合わないぞ、、。
Pre-congress courseを僕一人に任されています。
あ〜、焦ってきた。
追記:僕に面と向かって「世界のヒロ」と言う人が多いですが、僕自身は自分の事をそんな風には思っていません。そんな変な妬みを言う人は、正直軽蔑しますし、付き合を遠慮させて頂きますのでご了承ください。