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院長日誌

  • 日本臨床矯正歯科医会を退会

    今から 35年ほど前でしょうか、大学の医局員時代に日本臨床矯正歯科医会(以下日臨矯)の例会にゲスト参加する機会があり、矯正専門医を志していた自分は日本矯正歯科学会学会(以下日矯学会)とは違った at homeな空気の日臨矯に感動し、当時の矯正専門医の先輩方を見て憧れ、入会を希望しました。

    しかしながら、日臨矯は「開業している矯正専門医しか入れない」という会規があり、医局員の自分は入会する事が出来ず、将来開業したら必ず入会しようと思っていました。

     

    開業して少ししてから入会し、最初は良い会だと思いましたが、暫くすると納得出来ない部分がいくつか見えてきて(後述)、大会にも全然参加しなくなりました。

    年 16万円という世界屈指の高い会費を毎年支払いつつ、会から送られてくるリーフレットや書類は、私には全く役に立たない物ばかりで(必要だと思っている会員がいるのか疑問です)、法外な年会費を支払いながら会員資格を継続してゆくメリットは感じなかったものの、特に辞める理由もなかったため、20余年会員資格を継続して来ました。

     

    ところが先日、専務の対応*があまりにも腹立たしく、到底容認出来るものではないために、6月3日で日臨矯を退会しました。

    16万円という会費を振り込んで 4日後のことです。

    その 4日間に会からの恩恵は微塵も受けていませんので、16万円の返金を求めました。

    お金惜しさではなく、専務をはじめとする執行部の対応を見るために返金を求めたのですが、 1円たりとも返金して貰えませんでした。

    会規や法律論は兎も角として、4日間で 16万円、皆さんはこの話を聞いてどう思われるでしょうか。

     

    最近、日臨矯を退会する先生が多く、特に日本矯正歯科学会の臨床指導医(以下日矯専門医)や、日本だけでなく海外でも有名な先生が次々と退会してゆくのを見て、驚き、不思議に思っていました。

     

    私は、みんなが辞めるから自分も辞める、という考えは持ちあわせていないので、辞めるつもりは無かったのですが、専務と会長の対応、さらに、矯正専門医の会である筈の日臨矯の実情と今後の方向性が容認出来なくなったので退会しました。

     

    辞めた一番の原因は専務の態度で、そもそも会長はじめとして選挙で選ばれたということは、一人一人の会員が「私の代わりに会を良い方向に運営して下さい」と託して選んでいる筈ですから、会員の言葉に真摯に耳を傾け、会員から問題指摘や質問があれば真摯に対応する義務がある筈で、会員よりもむしろ低姿勢でなければならない筈です。

    ところが、一般会員よりも身分が上であるかの如く、「聞き捨てならない」「時期執行部に申し送りする」など高圧的なメールを送ってくる、屁理屈ばかり羅列して、都合の悪いことには答えない。

    会長も会長で、私のメールに返答することなく完全無視、こんな専務や会長では、退会者が出るのは当然かと思われます。

     

    そもそも日臨矯は、開業している矯正専門医の集まりの筈です。

    知人の矯正専門開業でない先生が入会を希望しても入会出来ませんでしたし、日臨矯のHPには

    「わたしたちはオルソドンティストです」

    「日本臨床矯正歯科医会は、会員一人ひとりが矯正歯科の専門開業医としての豊富な経験と責任の上に立つオルソドンティストであることを厳しく自らに課し、日々患者さんに向き合っています。」

    と詠っています。

     

     

     

    さらに、「新・東京宣言」では

    「私達は、正歯科専門開業医として自己研鑽に努め、その専門的知識・技術をもって良質な橋正歯科医療と安心できる医療態勢を提供することで、国民の健康増進、生活の質の向上に貢献します。」と書かれています。

     

     

    この webisteは、日臨矯の会員だけでなく、世界中の人に公開されているものです。

     

    ところが実際には、矯正専門医でない小児歯科医や一般歯科医が何人か在籍しています。

    こんなことは断じて許される問題では無く、放置しておいては矯正専門医の存在そのものさえも危うくなってきますので、私は今から10年ほど前、正式な手続きを踏んで、「日臨矯は開業している矯正専門医だけが入会出来る筈なのに、何故小児歯科の先生が会員なのか」と総会で質問しました。

    総会では執行部は明確な回答せず、あとから送られて来た返答は、「●先生が入会したその年度だけは矯正専門医以外でも入会出来たのです」とのこと。

    こんな滅茶苦茶な話があるでしょうか?

    当時の会長は「会の根幹に関わる問題です」と言っているのに、執行部はこの問題を解決しようとしないどころか、その会員擁護にまわる。

     

    さらに、この●先生は、日臨矯だけでなく、世界でも極めて威厳のあるアメリカの矯正専門医の会にも applyして会員となっています。

    その会は入会資格として“Affiliate members shall have been actively engaged in the exclusive practice of orthodontics for at least five years” と明記されています。

    つまり、入会資格として、直近の5年間は矯正歯科だけを専門に行っていること、と明記されていますが、●先生は、applyした時点では、日本小児歯科学会の小児歯科専門医として登録されていました。

     

    日本小児歯科学会は、専門医について以下のように定めています。

    第2条規則第2条に定める専門医指導医の認定のためには次の要件を満たさなければならない。

    1)診療実績のうち小児患者の占める割合が50%以上

    2)最近5年間に小児歯科分野の論文発表あるいは学会発表が3編以上

    3)最近3年間に小児歯科分野の学会活動および地域活動に5回以上参加

    第9章専門医の認定更新、第20条専門医は、5年ごとに認定更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。

     

     つまり、日本小児歯科学会の小児歯科専門医であるということは、上記米国の学会の入会規約に沿っていないということを自ら証明していることに他なりません。

    この●先生が “shall”の意味を勘違いしているということは無いでしょうし、知っていて applyしたのであれば、これはモラルの問題、人間性の問題になってきます。

    日本の矯正歯科界はその小児歯科医に掻き回され、矯正専門医自体が存在しなくなる危機に瀕しています。

    私は、その小児歯科医を個人批判しているのではなく、「資格」について論じているのです。

     

    そもそも資格とは何か。

    何かをしようとする場合、自分にはその資格があるのかどうか、一番最初に考える筈です。

    例えば、自動車運転免許。

    日本では運転免許は18才からと定められています。

    「自分は子供の頃からレースをやっているから、車の運転はそのへんの人より上手い」と、いくら大声で言ったところで、18才にならなければ、運転免許を取ることは出来ません。

    免許を持っていないことをわかっていて公道を運転すれば、無免許運転、刑法犯で行政処分となります。

    知っていて黙って見ていた人は幇助で同罪、懲役または罰金刑となります。

     

    あるいは、大学受験。

    受験資格が無いのにセンター試験会場に潜り込み、仮に合格点を取ったとしても、受験そのものが無効であり、大学に入学することなど出来ません。

    もしも仮に何かの手違いで大学に潜り込めたとしても、問題が発覚した時点で合格は取り消し、大学には居られなくなります。

     

    では、もし仮にその歯科医が標榜を改め、矯正歯科専門に衣替えして小児歯科学会の専門医も辞退したらどうでしょうか?

    上記アメリカの学会の bylawでは、5年間は矯正歯科専門でないとダメですから、2021年に上記の衣替えをしたのなら、それまでは資格外となり、一旦会員資格は抹消、2026年に再度トライしてください、となる筈です。

     

    今の日本にそれを言える矯正専門医が一人でもいるでしょうか?

    昔なら、三谷先生、黒田先生、近藤先生など、おかしい物はおかしい、と、自分の事よりも矯正専門医を守るために声を上げる先生がいましたが、今はどうでしょうか。

    「友達だから」と、間違ったことでも黙認する。

    友達であれば、「お前、間違ってるぞ」、「ここに来たければ小児歯科を辞めてから来い」と言ってやるべきだと思いますが、違うでしょうか。

     

    そもそも、矯正専門医とは何なのでしょうか。

    資格?

    肩書き?

    Status?

    患者さんが安心して矯正治療を受けられる先生を見つける際の1つの指標として、「矯正歯科専門医制度」というものがある筈です。

    アメリカでは American Board of Orthodontics、ヨーロッパでは European Board of Orthodonticsをはじめとして、各国毎に board systemがあります。

    EBOは大学教授でも合格できないほどの難しい試験で、 EBOを持っているというと、その矯正専門医は患者さんからも歯科医からも物凄く respectされます。

    歯科大学の矯正歯科の教授で EBOを持っていないと、国から試験を受けろと言われます。

    EBOは 2回しか受けれないために、2回試験に落ちて、結果的に教授をクビになるということも珍しくありません。

    私自身は日矯専門医EBOM-Orthも持っていますが、私自身にとって一番重要だと思っているのは日矯専門医です。

     

    日本では日本矯正歯科学会が専門医制度を 2006年に立ち上げましたが、込み入った事情があり、「日本矯正歯科学会専門医」と表記することは不可で、「日本矯正歯科学会臨床指導医」(以下日矯専門医)という用語を使う事になっています。

    発足してから既に17年も経過しているのに、いまだに「日本矯正歯科学会専門医」という用語ではなく「臨床指導医」という、変な呼称になっており、患者さんからも時々「臨床指導医って何ですか?」と聞かれます。

     

    政治的な事には詳しくないので、間違っているかも知れませんが、私が知っている限りでは、日本成人矯正歯科学会日本矯正歯科協会のそれぞれが「矯正専門医」という語句を使って専門医制度を立ち上げているために、厚労省が混乱を招くとして許可しない、というのが理由だそうです。

     

    私は日本矯正歯科協会にはもともと属していませんが、日本成人矯正歯科学会からは理事を拝命しておりました。

    しかし、日本成人矯正歯科学会が日矯専門医の抵抗勢力となっている以上、会員であるべきでは無いと考え、自ら退会しました。

    抵抗勢力の会員が、日矯認定医、指導医、専門医であるということを医院のホームページで詠っておいて、その一方では、日本矯正歯科学会の妨害をしている、こんなことが許されるわけがありません。

     

    日矯専門医の称号がこの先いつまでも使えなければ、困るのは日矯学会会員であり、矯正治療を希望している患者さんです。

    日矯専門医委員会は、たった1つのことを実行すれば、この問題は容易に解決すると思いますが、なぜそれをしないのか私にはわかりません。

    このままではこの先何年経っても「日本矯正歯科学会専門医」という用語は使え無いのではないかと思います。

     

    また、日臨矯退会理由の「会の実態と方向性」ということに関しては、会員のなかで日矯専門医を持っている先生は、たったの40%しかいないということです。

    これは、私がここに書かなくても、日臨矯のホームページに掲載されている会員と、日本矯正歯科学会のホームページに掲載されている臨床指導医と照らし合わせれば、誰にでもわかることです。

     

    それを知った時は唖然としましたが、さらに驚くべきは、日臨矯は会員数を維持してゆくために今後は入会基準を一層緩くするらしいということです。

     

     

    つまり、現時点で日臨矯の会員の60%は日矯専門医の試験を受けていない、ないしは、受かっていない先生であり、今後は上記の入会資格に則って日臨矯が運営されてゆけば、日矯専門医を持っている会員数が減り、日矯専門医を持っていない先生が増える、そうすると会員の矯正歯科レベルも低下する、つまり、日本で矯正歯科専門開業している矯正歯科医のレベルはどんどん低下するということです。

    こんな状態で「わたしたちはオルソドンティストです」、「日本臨床矯正歯科医会は、会員一人ひとりが矯正歯科の専門開業医としての豊富な経験と責任の上に立つオルソドンティストであることを厳しく自らに課し、日々患者さんに向き合っています。」などと言える筈がありません。

     

    また、「日臨矯会員の全員が日矯専門医となることを目指す」などと言いながら、日矯専門医を持っていない人が会長に就任するというのは一体どうゆうことなのでしょうか。

    私はその先生のことを名前も知らないので、医院のwebsiteを見てみたところ、違反事項が少なくとも3点確認出来ました。

    日矯専門医を持っていないから、ホームページが違反していてもお咎め無し?

    そうゆう問題では無い筈です。

    これで日臨矯会長としての「資質(資格)」があるとは思えませんし、こんな先生が会長になってしまう日臨矯という会は、一体どうゆう会なのか、私には到底理解出来ません。

     

    この先、アライナー矯正は世界中で物凄い勢いで拡大してゆきます。

    アライナーその物自体はマテリアルもデバイスも大変な進歩を遂げており、従来の問題点も改善されて来ています。

    私はアライナーは否定しませんし、一生懸命やっている第一人者の先生には、もっと頑張って欲しいと応援しています。

    しかしながら、アメリカで問題になっているのと同じ問題が日本でも必ず起こります。

    矯正の知識が全く無い一般歯科医がアライナーを患者さんに勧める、あるいはヤマト運輸が始めたように歯科医師不在のアライナー矯正がどんどん増え、取り返しのつかないトラブル症例は物凄い数になる、これは間違いありません。

     

    日本の矯正専門医の団体として、一層手綱を引き締めないといけない時であるのに、こんな状態で良い筈がありません。

    日本を代表するような矯正歯科専門医の大御所が日臨矯に見切りをつけて次々と退会してゆくのを一大事だと認識しない。

    日本の矯正専門医が危機に直面しているというのに、日臨矯の執行部はその問題に真剣に向き合い、会員の質を高め、会を真の専門医が集まる魅力的なものにしようという対策を立て、実行しない(専務のメールを読めば明らかです)。

    この専務は役を退いたらしいですが、辞めたら長年積み重ねてきた過ちが消えるわけではありません。

    自分の保全を考えず、会のために献身的でなければ、理事になる資格もないし、このような人達が理事になっている以上、会が良くなるわけがありません。

     

    日本の矯正歯科専門医はこの先一体どうなるのでしょうか。

    先のアメリカの矯正専門医の学会も襟を正さないと、近い将来、日臨矯と同じ道を辿ることになります。

     

    私が今、学生だったならば、矯正専門医にはならないし、なりたいとも思わないです。

    このままでは、近い将来、日本の矯正歯科は崩壊すると思います。

    私なら1年もあれば見違えるような矯正専門医の会にする自信がありますが、もう関わりたくありません。

     

     

    最後にことわりをつけますが、この院長日誌は、会員の皆さんを日臨矯を退会するように誘うものではありません。

    私自身、この専務とのやり取りが無ければ退会には至らなかったでしょうし、このようなブログをアップすることもありませんでした。

     

    また、この日誌で日臨矯は私を訴えてくるかも知れませんが、私は事実のみを書いております。

    訴訟は困りますが、訴訟を起こす前に、私がどうしてこのような事を書いているのか考えて頂きたい。

    私を訴えることよりも、日本の矯正専門医を守るにはどうすることが必要か考えて頂きたいです。

     

    以上、相当の覚悟で書いております。

     

     

    *具体的には、会からの郵便物が同じ日に2通来るとか、郵便物の中に同封されている返信用封筒にはいちいち切手が貼られているので、料金後納にすれば使用されない無駄な切手代や切手を貼る人件費が削減できるのではないかと指摘したところ、専務からは「切手を貼付する手間は、委託契約をしている事務局が10年以上行っておりますので、これを省略して契約料が減額できるとも思えません。」というナンセンスな返答でした。

    海外の学会は、学会誌も subscription、総会の委任状も投票もネットですから、同様に改めれば大幅に通信費と人件費が削減出来る事は明らかで、10年以上経費を無駄使いしてきた、と考えることもなく、間違いを指摘されたことに腹を立てて、俺たち理事に刃向かう奴は許さんと言わんが如く「聞き捨てならない」「時期執行部に申し送りする」等々のメールを送ってよこす。

    それだけでなく、私のメールを勝手に他の理事や幹事に CCで送信し、やり取りをする毎に CCの受信者が増えて行く。

    メールを他の人に CCで送るならば、送る前に一言断りをいれるのが常識です。

    この専務は昔から「自分は特別に優秀、お前らとは違う」という雰囲気ありありのお方でしたが、本当に優秀な人間なら、もう少しやり方を考えると思います。

    会長は日臨矯の websiteには立派なことを書いていますが、会長宛にメールを送っても、無視。

    歴代会長は丁寧に電話をかけて来てくれて話をしてくれたり、メールで詳細な事情説明を行ってくれましたが、これじゃあ論外、いろんな先生が退会してゆくのも仕方が無いと思いました。

     

    会長をはじめとする理事役員は website上で役職と氏名が公開されていますので、実名を書いても良いと思いますが、差し控えさせて頂きました。

     

     

     

     

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