2002年 7月 11,12日の両日、東京・三田の笹川記念会館に於いて、Roth/Williamsの外科矯正セミナーが開催され、外科矯正治療に関する最新のテクニックと知識について勉強しました。
主催者であるRoth/Williams Center Japanの池田先生は、1979年に日大卒業後、Pennsylvania大学の歯学部矯正科を卒業されており、また、89年にはAmerica の矯正専門医の資格であるAmerican Board of Orthodonticsを取得されており、私からみると雲の上のそのまた上の存在です。
台風6号の影響で、当日の朝、遅れて会場に入って行きましたら、席が空いていなかったので池田先生がお座りになっていた席をさっと譲って下さり、感激するとともに、僕が座っていいのかしら、、と恐縮してしまいました。
Dr.Roth, Dr.Williams, Dr.Ayala, Dr.SapunarらによるSoft tissue analysisや、Model surgeryの話も大変貴重で勉強になりましたが、本セミナーでの最大の収穫は何といっても、アメリカにおける最新の外科矯正手術の詳細について詳細な講義を聞くことが出来たことでした。
懇親会終了後には、Dr.Takemotoはじめ東京歯科のOBの先生方と一緒に After fiveに連れっていただき、特に3次会では、普通では聞けないような外科矯正手術に関する話を聞かせて頂きました。
以下に外科矯正の日米の比較をまとめてみましたので、御参考まで。
U)=USA、J)=JAPAN
■医療制度
U)包括一括
J)出来高払い
■Fee
U)Private insuranceが主体
J)公的保険 (負担金は下顎のみのsurgeryで30~40万円)
■入院期間
U)1~3日(殆ど2日) 顎間固定は1週間
J)短いところで7日~14日、長いところでは6週間、と、医療機関によってかなりの差がある
■Fee
U)Private insuranceが主体
J)公的保険 (負担金は下顎のみのsurgeryで30~40万円)
■op開始時間
U)通常 7:30 a.m. 開始。1日5症例ということは珍しくない。
J)通常 9:30 a.m.頃開始。通常1日1症例、頑張っても2症例が限界(?)
■op時間
U)短い。 下顎のみのopで、約30分(!) 上下同時移動術で約2時間(!!)
J)長い。 通常下顎のみのopで、5時間(!) 上下同時移動術だと、、???
■出血量
U)非常に少ない
J)中等度~ 希に輸血を必要とすることもあり
■術後管理
U)分業制
J)公的保険 (負担金は下顎のみのsurgeryで30~40万円)
■Fee
U)包括管理
J)公的保険 (負担金は下顎のみのsurgeryで30~40万円)
[ USAの保険制度 ]
Private insuranceが主体で、Fee for service, Management care service, Prefered provider org., Health maintenance org.に大別される。
Fee for serviceは医療機関の選択が自由であるかわりに、$200~$1,000の自己負担金がある。
医療費が$10,000までは20%自己負担、 $10,000を超える場合には10%自己負担。
Management care serviceは医療コストの低減を目的としており、アクセス、サービスを制限。Prefered provider org.は公的機関のみ。
Health maintenance org.は専門医への受診、入院はHome Dr.のReferが必要。
アメリカにはP.R.O.(Peer review org.)が存在し、医療検察官制度がチェックしている。
また、現在日本でも保険適用となっている顎変形症の手術(下顎のみ)の患者負担については以下のとおりです。
■op検査
U)$200~$400
J)約13,000円
■画像検査
U)$300~$600
J)約10,000円
■op費用
U)$4,000~$10,000
J)概ね 800,000円前後
■入院費用
U)$1,400 (2日間で)
J)概ね130,000円(7日間として)
■麻酔費用
U)$600
J)90,000円前後
■患者負担金
U)保険契約によって異なる
J)3割負担として約35万円。
吸収性プレートを使用した場合、1枚25万円×枚数×30%
上下同時移動術の場合で50万円くらい
手術関連の講義だけでA4用紙に20枚メモをとりました。
上に記載したのはごく一部で、まだまだあるのですが、かなり専門的な話になりますので、簡単にまとめてみました。
わざわざ医院を休診にして遠路はるばる受けに行っても、ガックリして帰ってくることが多い今日この頃ですが、今回のセミナーはタメになりました。
台風にめげずに行って良かったです。池田先生、ありがとうございました。
最近、歯を白くしたいという患者さんが増えています。
矯正専門の先生の中には10年以上も前からブリーチングを行っている先生がたくさんいらっしゃって、今まで「広先生はどうしてやらないの?」と聞かれることが多々ありました。
私自身も興味が全くないわけではなかったので、機会あるごとに文献等を渉猟してきましたが、やはりイマイチ不明な部分が残されているため、今までは、行ってきませんでした。
しかしながら、最近、成人患者さんで矯正治療後にホワイトニングを希望される方が多く、また電話でもホワイトニングに関する問い合わせが増加してきているため、6月30日、時差ボケも回復しきらないまま、東京医科歯科大学卒後研修セミナーのプログラムであるホワイトニングのセミナーを受講してきました。
それで、今後の方針について結論から先に申し上げますと、ひろ矯正歯科ではホワイトニングは行いません。
その理由として、
等々です。
これらは歯科医院で行うオフィス・ホワイトニング、自宅で行うホーム・ホワイトニングのいずれについても共通です。
もちろんこれらは、私の private opinionであり、ホワイトニングを行っている先生達を批判するたつもりはありませんので、誤解なきよう、お願いいたします。
矯正歯科というのは本当に分の悪い仕事で、収入のことだけを考えるならば、60万円の矯正費用で2~3年間に及ぶ治療を行い、治療後5年以上も経過を追い、その後、万が一凸凹が出てきた場合には再治療費を頂くことなく再治療を行いますので、単純に考えても矯正の患者さんを1人治療するならば、ホワイトニングの患者さんを10人治療した方が遙かに儲かりますし、精神的にも楽だとは思いますが、私自身の出した結論として、「当医院では、審美のみを目的としたホワイトニングは行わない。」ということを決断しました。
もちろん矯正治療中の患者さんの歯のクリーニングなどは従来どおり行います。
みなさん、通販のホワイトニングキットなどは、絶対に、絶対に、やめた方が良いですよ。
余談ですが、このホワイトニングの講師は、「受講生は遠路はるばる、忙しい時間を割いて参加しているのだ」ということを全く自覚しておらず、講義の進め方も思いつくまま、質問に対する回答も受講生を侮辱したような、非常識でたいへん腹立たしいものでした。
2002. 6. 20 ~ 6.22の間、European Lingual Orthodontic Congress が ドイツの Berlin で開催されました。
ここ数年間、ALOAやESLOには欠かさず参加して口演してきましたが、アメリカの同時多発テロ以来、恐くて暫くは海外には行かないつもりでした。
ところが、春先にAir mailで送られてきたプログラムを見てビックリ。。。
メインスピーカーのところに私の名前が!!
絶妙のタイミングで、その日に第3回ESLOのPresidentであるDr.Scuzzoから電話があり、「Toshi(私のこと)も話をすることになっているので、必ず来いよ!」とのこと。
ちょっと戸惑ったが、まあ、ものは考えよう、話をしたくてもさせてもらえない先生も沢山いるのに、こんなに強引な手段を使ってまで呼んでくれるとは、本当に有り難いことです。
お呼びがかかる間が花ですからね。
「Ok, I see. I aprreciate your kindness. I will do my best! See you in Berlin! 」と答えて、参加決意。
飛行機はファーストクラスやビジネスクラスの先生が多いのですが、私にゃそんな余裕はありません。
いつものごとく、JALに電話して前売り悟空28のエコノミークラスを購入。
かくして6月17日、家族を家に残し、1人ドイツに旅立ちました。
パリのシャルル・ドゴール空港で乗り継ぎ、18日の夜9時過ぎに会場でもある Estrel horel Berlin に到着。
翌日は時差ボケ解消のためのフリータイムなので、市内を見物に。
あれに見えるはベルリン大聖堂
私はいつも時差ボケ解消のためには、とにかく歩き回ることにしているが、、、正直40をすぎてからキツくなってきたような気がする、、。
明日19日は、Pre-Congress Seminarだ。 寝るわけには いかない、、。
学会前夜、President の Dr.Dirk Wiechmann が Dinner に招待してくれました。
ベルリン市内の旧・東ドイツに位置するドイツ料理のレストランで、各国の大統領や日本の総理大臣も来たことのあるという、たいへん由緒あるレストランだそうです。
私に手をまわしているのが President の Dr.Dirk Wiechmann、私の向かいの白髪の先生がALOAの Board member の Williams先生、その横が Dirkのフィアンセです。
Dr.Takemoto はDirkの向こうにいらっしゃいますが、見えるでしょうか?
当日、会場入り口にて
ESLOのmeetingは、年毎に大きくなってゆきます。日本も頑張らないと、置いてゆかれます!!人の足を引っ張る暇があったら、自分を磨きましょう。
いつもながら、つたない英語で 口演です。
初日の学会が終わり、Ormco主催のパーティーに参加。
一番左でおどけているのが President の Dr.Wiechmannです。
ドイツ人はとにかく勤勉で、話せば話すほど良い人達です。
学会最終日、一番最後には表彰式です。
僭越ながら、私はActive memberとして認められた先生達に Certificateを手渡しました。
過去2年間の最も優秀な論文と、当日の最も優秀なポスタープレゼンテーション、ならびに当日の最も優秀なテーブルデモンストレーションに輝いたのは、いずれもSouth Koreaの先生でした。
Koreanの優秀さには私など、とても太刀打ち出来るものではありません。
私の知っているKoreanはみな、母国語、英語、日本語と、3カ国語は当たり前のように話します。
日本人、どうしたんだ!!
毎年毎年、バカみたいに道路を削っては舗装をやり直している場合じゃないぞっ!!
学会も全て終わり、夜はGara Dinnerという格調高いパーティーです。
会場も Berlinで最も格式高いAdron Hotel。
こんなところにゃ、プライベートじゃ来れません。
パーティー会場では、President のDr.Wiechmannや歴代会長、ALOAのPresident の Dr.Mario Pazや Dr.Takemotoと同じテーブルで緊張しました。
次期会長のDr.Pabro Echarri です。
ESLO は Biannual なため、次回のESLO は2004年にSpainのBarcelona です。
学会もパーティも全て終わりましたが、何時、誰に呼ばれるかわからないので1日予備日をとっています。
しかし、このまま帰る手はないと、早朝ホテルをこっそりと抜け出し、電車に乗って世界遺産の街、Quedlinburgに向かいました。
REという特急電車に揺られること4時間、世界遺産の街に到着しました。
木組みの家がならぶ街並が美しい。
ビールが美味しい。水よりも安い!Weizenを2杯と、Blackを1杯飲み、ほろ酔い気分に。
街を4時間ほど歩いて、また電車に揺られてホテルに帰ります。
早いもので、今日はもう帰る日です。
明日から患者さんがギッシリはいっている、、、。
私はこの Lingualの学会が大好きです。
みんな Lingualが好きな人達が集まり、真剣に学び、真剣に discussionする。
私のように、長野の山奥で開業していても、つたない英語で話していても、一生懸命、一生懸命やっていると、いつも誰かが「Toshi、お前のpresentationが一番良かったよ!」と言ってくれます。
お世辞でも、本当に嬉しいものです。
これからも頑張ります!!
帰る前に最後のビールを、、。