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院長日誌

矯正学

  • 矯正歯科長期安定とは何か?

    12月15日、東京 アキバプラザにて、第2回 矯正歯科長期安定研究会が開催され、講演を頼まれていましたので、行ってきました。
    この記事は非常に長文になりますので、勉強したい人だけ読んで頂ければ幸いです。

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    矯正治療を希望する患者さんは、気になるところ、治したいところもさまざまで、要求の度合いも人によって異なります。
    年齢は、ひろ矯正歯科に初診相談で来られた方で、最も幼い患者さんは 1才未満、最高齢は 70才超です。
    一人一人、症状も違えば、治療方法も異なります。
    よく「オーダーメイド矯正」とか、「オーダーメイド治療」とか書いている医療機関がありますが、医療はオーダーメイドが当たり前のことで、年齢も違えば、歯の位置、形、大きさ、骨の大きさや厚み、骨のバランス、歯列の幅や習癖も一人一人異なりますので、詳しく検査を行い、長年の経験に基づいて診断を行い、一人一人、その患者さんに最適の治療法、最も安定するであろう方法を立案し、治療するわけです。
    ひろ矯正歯科では、治療開始された患者さんの殆どは、非常に熱心に治療を受けてくださり、歯磨きなどもお教えしたとおりに行ってくれています。
    そういった患者さんの理解と協力があるからこそ、素晴らしい治療結果を得ることが出来ます。

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    その双方の努力の結果得ることが出来た治療後の素晴らしい歯並びを維持してゆくためには、装置を外した後、「保定」が必要です。
    保定をしなければ、歯並びは乱れ、治療前の状態に戻ったり、或いは治療前とは違った不正な状態になってしまうことがわかっています。

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    保定装置は、一般的には、上顎には入れ歯のような保定装置(Wraparound type)、下顎には細いワイヤーを接着(Fixed)し、2年間で保定終了してしまう医療機関が多いのですが、2年で保定をやめたら、歯並びは絶対に悪くなります。

    それがわかっているのに、何故 2年で保定を終了してしまう医療機関が多いのか?
    キリが無いからです。
    患者さんのためではなく、医院のため自分のために線を引く、つまり 2年で終わりにしてしまわないと、保定の患者さんがどんどん増え続け、治療中の患者さんを診る時間がなくなってしまうから、患者さんのことよりも、自分のことを考えているわけです。
    なので、保定期間は 2年として、2年経ったら保定を終了して、一旦サヨウナラをする。
    そうすると、必ず不正な状態になりますので、何年後かに不正咬合に戻ってしまったと言って来院されたら、「あ〜、再治療が必要ですね」と言って、再検査、再診断、再治療となり、費用も再度請求する医療機関が多いです。

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    でも、これは患者さんにとっては悲しいことで、大金を払って、何年も通って、折角綺麗になった歯ならびが乱れてしまったら、何のために治療をしたのかわからなくなります。
    なので、ひろ矯正歯科では、最低 3年間の保定を行い、3年目に保定を継続するか、外すかの判断を御自身でして頂いています。

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    どうして 2年でなくて 3年なのか、、2年では不十分だけど、3年なら大丈夫なのか?
    違います。
    3年でも不十分です。
    じゃあ、何故、3年なのか?
    それは、2年〜2年半経過した時点で、保定装置を外したら不正な状態になってしまうということを御説明し、半年間は患者さん御自身に考えて頂く期間として設けています。

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    また、ひろ矯正歯科では、保定装置は一般的に使われている、入れ歯のようなものは使わずに、上下前歯部の裏側に細いワイヤーを専用の接着剤で付けて行いますので、人からは見えないし、異物感も殆ど無し、ワイヤーが付いた状態でフロスや歯間ブラシも使う事が出来ますので、虫歯になる心配もありません。

    一般的に使われいる保定装置

    ワイヤーが見え、喋りにくく、食事の時はいちいち外さないといけない、使うのを怠ると不正咬合再発です。

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    ひろ矯正歯科で使用している保定装置

    上下とも見えない、違和感も少ない、後戻りのリスクも少ないです。

    ワイヤーが付いている部分もフロスを使う事が出来ます。

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    よく、「このワイヤー、外さないと虫歯になるよ」、とか、「歯周病になるよ」と言う一般歯科医や歯科衛生士がいますが、それはその歯科医師・歯科衛生士の勉強不足、認識不足です。
    ひろ矯正歯科の患者さんの殆どは、今の綺麗な歯並びを維持していきたいので保定のワイヤーは外したくない、と希望されており、長期保定している人は 20年、30年という方が非常にたくさんいらっしゃいます。
    治療終了後 3年間は 6ヶ月に 1度、歯並びのチェック、ワイヤーと接着剤のチェック、歯石や歯磨きなど、お口の状態のチェックに来て頂き、3年以上継続される方は、その後は 3年に 1度 来院して頂いています。
    医療機関によっては、矯正の治療代とは別に保定料を請求するところもありますが、ひろ矯正歯科では、保定は治療代の中に含まれ、別料金ということもありませんし、長期保定に関しても追加料金というのもなく、観察料のみで保定延長することが可能です。

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    今回の矯正歯科長期安定研究会(以下LTSOA)は、その名のとおり矯正治療後の「長期安定」について考える会なのですが、そもそも、「安定」とは、何でしょうか?
    殆どの歯科医師や矯正専門医は、下顎前歯部の凸凹が無ければ安定している、凸凹が出てしまったら安定しなかった、と思っています。
    この日の他の演者の先生達も、そして参加されている先生の大多数は そう思っているように感じました。

    しかしながら、不正咬合には、上顎前突、下顎前突、顎変形、開咬、空隙歯列等々があり、非常に良好な治療結果を得たにもかかわらず、何年後かに上顎前突が戻ってしまった、開咬が戻ってしまった、正中離開が戻ってしまった、これは安定しているとは言えないわけです(※1)
    ですので、私は、この点を含めて、長期安定とは何か、長期に安定するにはどうするのが良いかプレゼンし、私の考えはお伝えする事が出来たかなと思います。

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    プレゼンでは、まずは、症例を見て頂きました。

    臨床家である以上、きちんと治っていなければ話にならないからです。

    今回使用した症例は全てリンガル、舌側矯正で治療した症例で、年代順に出しましたので、治療結果の良いものだけを選んで出したわけでもなければ、経過の良いものだけを出したわけではありません。

    これらの症例は20年以上前に治療した症例ですので、ブラケットは大きくてバルキーな Kurz Applianceを使っていますが、現在ひろ矯正歯科で使用しているリンガルブラケットは、オリジナルの Mienai bracket、小型で薄いもので、快適にリンガルの治療を受けて頂けます。

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    症例 1

    治療前 叢生が著しい、4本抜歯症例です。

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    治療中

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    治療後

    治療期間は 2年 7ヶ月でした。

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    治療終了後 24年です。

    抜歯空隙が開くこともなく、よく安定しています。

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    症例 2

    治療前 叢生と口元の突出が主訴です。

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    治療中 主訴を改善するためには 4本の抜歯が必要となりました。

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    治療後

    治療期間は 2年 5ヶ月でした。

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    治療終了後 23年です。

    治療後の良好な状態を維持しています。

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    症例 3

    治療前 著しい叢生です。

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    治療中 診断の結果、非抜歯で治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 6ヶ月でした。

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    治療終了後 23年です。

    下顎正中に少し隙間が空いています。

    リテーナーが外れたまま放置されたのが原因です。

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    治療終了後 18年の時には見られなかったものです。

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    症例 4

    治療前 凸凹は僅かですが、上下顎前突で、口元が著しく突出している方です。

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    治療中 口元を引っこめるため、4本抜歯を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 11ヶ月でした。

    主訴はバッチリ改善されました。

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    治療終了後 23年です。

    前歯の噛み合わせの深さが若干深くなってきていますが、後戻りはなく、安定した状態を示しています。

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    症例 5

    治療前 著しい叢生です。

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    治療中 3本抜歯で治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 3年 4ヶ月と、少し長期を要しました。

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    治療終了後 22年です。

    奥歯のズレも後戻りはなく、安定した状態を示しています。

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    症例 6

    治療前 上顎前突です。

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    治療中 叢生と上下前歯をひっこめるために 4本抜歯を行い、治療しました。

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    治療後

    治療期間は 2年  6ヶ月でした。

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    治療終了後 22年

    前歯の噛み合わせの深さが少し深くなってきていますが、これは下顎臼歯の補綴をやり直した歯科医師の治療が原因です(高径不足)。

    抜歯空隙が開くこともなく、安定した状態を示しています。

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    症例 7

    治療前 著しい叢生を伴う上顎前突です。

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    治療中 4本抜歯を行い治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 8ヶ月でした。

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    治療終了後 21年です。

    右上 1の被せ物が気になりますが、上顎前突が戻る事無く安定した咬合を示しています。

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    症例 8(日矯専門医試験に提出した症例です)

    治療前 著しい叢生を伴う上下顎前突です。

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    治療中 主訴改善のために 4本抜歯を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 3ヶ月でした。

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    治療終了後 21年です。

    抜歯空隙が開くこともなく、安定した状態を示しています。

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    症例 9

    治療前 著しい叢生を伴う開咬です。

    開咬は治療後安定せず、再発する事が非常に多いです。

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    治療中 3本抜歯で治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 8ヶ月でした。

    開咬でしたので、Over Tx.を行い、Overbiteは深く仕上げました。

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    治療終了後 21年

    開咬が再発することなく、非常に安定した咬合を呈しています。

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    症例 10

    治療前

    前歯の噛み合わせが深く、下顎前歯が見えません。

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    治療中 診断の結果、非抜歯で治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 1年 8ヶ月でした。

    ちょうど良い状態で終わるとすぐに噛み合わせが深くなってしまいますので、長期安定のために前歯が噛めないくらい浅く仕上げました(Over treatment)。

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    治療終了後 20年

    あれだけの Over Tx.を行ったにもかかわらず、前歯の噛み合わせが深くなってきています。

    まあ、治療後 20年ですから十分安定していると言えますが。

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    症例 11

    治療前 著しい叢生を伴う Skeletal 3です。

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    治療中 左上 1本のみ抜歯して治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 1年 9ヶ月でした。

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    治療終了後 20年

    3級が戻ること無く非常に良好な状態を維持しています。

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    症例 12

    治療前 著しい開咬です。

    症例 9でも書きましたが、開咬は治療後に再発することが多く、最も安定の悪い不正咬合の 1つです。

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    治療中 上顎 2本抜歯で治療を行いました。

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    治療後

    治療期間は 2年 11ヶ月でした。

    開咬は再発せずに安定してくれるでしょうか、、。

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    治療終了後 19年

    開咬は再発せず、バッチリ安定した状態を維持しています。

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    上下前歯の凸凹など、審美的に患者さんが特に気にされる部分は、保定無しに長期安定は無理、長期保定が必要、しかも、長期保定は可撤式では無く、接着式の物がベスト、と考えますので、ひろ矯正歯科では、上下前歯の裏側に細いワイヤーを接着して、長期保定を行っています。

    アメリカでは、保定が無くても長期安定するという報告があり、特に、以下のの2つは非常に有名かつ臨床経験も豊富な先生です。

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    The Alexander Discipline Vol.2:Long-term stability, R.G. “Wick” Alexander, Quintessence, Chicago, USA, 2011.

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    James L. Vaden, Long-term stability -It begins with the treatment plan, Seminars in Orthodontics, Vol 23(2), 149-165, 2017.

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    この先生達は、保定が無くても長期安定すると報告しているのに、何故、ひろ矯正歯科では長期保定をするのか、、。
    患者さんをキープしておきたいからか?
    違います。

    保定の患者さんがどんどん増えたら、困るのは私自身です。
    2,200円、或いは 3,000円のチェック料が欲しいからか?
    これも違います。
    保定中に来院された患者さんを噛み合わせのチェックとリテーナーチェックするだけではなくて、30分、40分かけて、歯石を取り、歯の汚れなどをクリーニングし、虫歯のチェック、歯周病のチェックや、親不知のチェックなどをする、これだけで、3〜4万円のコストがかかりますので、医院としては保定の患者さんが来院される度に大赤字です。

    なのに、保定料金も取らず、切れたり外れたりしていても追加料金などは一切貰わずに診療しているのは何故か?

    患者さんのため、つまり、Volunteerで行っています。

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    講演では、さらに、

    • 下顎の犬歯間幅径を拡大してはいけない
    • 咬合平面を変えてはいけない
    • 過蓋咬合を治療するときには、臼歯を挺出させて治してはいけない、前歯を圧下しろ
    等々、矯正学の基本原則についてもお話ししました。

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    まずは犬歯間幅径について。

    例えばこの症例

    下顎犬歯の位置は赤いドットです。

    下顎犬歯は近心に傾斜し、歯列弓から blocked outしています。

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    治療後です。

    下顎犬歯の位置は抜歯空隙に向かって遠心移動され、歯列弓は放物線状しているため、犬歯間幅径は当然拡大します。

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    下顎犬歯間幅径は治療前の 24mmが 29mmに「増加」していますが、これは拡大したのではありません。

    でも Dr. Alexanderは、これもダメだと言いましたが、それは彼の間違いです。

    治療前の 24mmを維持したまま治療を行うには、下顎前歯の抜歯をしない限り不可能です。

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    もう1症例

    著しい叢生で、下顎犬歯の位置も不正です。

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    治療後です。

    4番抜歯で、抜歯空隙に向かって犬歯は遠心移動しました。

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    歯列弓は放物線状しているため、下顎犬歯が遠心移動すると、当然ながら犬歯間幅径は増加します。

    犬歯間幅径は治療前の 20.1mmが 26.5mmに「増加」していますが、これは拡大したのではありません。

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    もう1症例

    治療前です。

    この状態であれば、99.9%の矯正専門医は前に出ている2本を抜くか、舌側に飛び出している2本を抜く思いますが、私は歯根吸収とか歯冠崩壊とかがない限り 6前歯は抜きませんので、4番を抜いて治療しました。

    下顎犬歯は4番の位置に移動します。

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    治療後です。下顎犬歯は遠心移動しました。

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    犬歯間幅径は治療前の 19.7mmが 31.7mmに「増加」していますが、これは拡大したのではありません。犬歯を遠心に、4の位置に移動したら、犬歯間幅径は増加するのは当然です。

    これらの症例も全てリンガルで治療を行っています。

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    何故、日本の矯正専門医は、長期安定に苦労しているのか?
    日本のドクターが下手だからか?
    違います。
    私は世界中の矯正専門医の治療を見て来ていますが、GP(一般歯科)は兎も角として、日本矯正歯科学会専門医(日本歯科専門医機構認定の矯正歯科専門医)のレベルは間違い無く世界1です。
    なのになぜ、日本の矯正専門医は、長期安定に苦労しているのか。
    まず、白人と日本人は症例の難易度が違います。
    日本人と白人の治療前の状態を比べて見ると、白人の殆どは、恐ろしく簡単なケースで、日本人のような物凄い八重歯、物凄い叢生、というのは稀です。
    日本人と白人は、叢生の度合いも違えば、骨格も違う、歯の大きさ、歯の形、舌の大きさも違えば、代謝も違う。
    なので、アメリカでまかり通っていることが、そのまま日本で通用しないんじゃないかな、と思いますので、そのことも講演の中に盛り込み、説明しました。

    Alexander先生が間違っているのは、彼が悪いのでは無く、白人にはこのような症例が無いために、アメリカの矯正専門医には下顎犬歯間幅径が増加するということが理解出来なくても仕方が無いと思います。

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    さらに、矯正した人もしていない人も、歳と共に歯並びが悪くなるのは何故なのか、そのメカニズムは何か、これについても私の考えを説明しました。
    私たち矯正専門医が埋伏智歯の抜歯を依頼するのは、親不知が歯並びを悪くするから、だから矯正歯科医は親不知を抜きたがるのだと思っている人が非常に多いです。
    ですので、埋伏智歯の抜歯は 17歳以上で無いと保険外という極めて医学的根拠に基づかない「常識」がまかり通っています。
    成人の患者さんでも、親不知の抜歯を依頼するときには、「矯正治療とは関係ありません」の文言を添えなければ、保険外となります。
    しかしながら、親不知は前歯部の叢生の後戻りとは関係ないという研究結果があります。

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    The effect of Third Molars on the Mandibular Anterior Crowding Relapse -A Systematic review, Ioannis Lyros, Georgios Vasoglou, et al, Dent. J.11(5), 131-, 2023. https://doi.org/10.3390/dj11050131

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    歳と共に歯並びが悪くなるのは何故か、私の考えは、以下のとおりです(※2)
    つまり、奥歯は解剖学的に少し手前に傾いた形をしています。

    ここに毎日60kg近い咬合力が1日数千回もかかり、また寝ている時にも食いしばりで、それと同等か、或いはそれ以上の力がかかります。
    そうすると、どうゆうことが起こるか。

    臼歯は近心傾斜します。
    この臼歯を近心に押す力は、臼歯よりも前方の歯を近心に押します。

    その結果、臼歯より前方の歯は押されて、デコボコが出て来ます。

    それだけでなく、咬合力で臼歯が近心傾斜すると、臼歯の高径は低くなります。
    臼歯の高径が低くなると、下顎前歯は上顎前歯と干渉してきます。
    その結果、下顎前歯には叢生が出来、上顎前歯はすきっ歯になってきます。
    これが矯正をした人もしていない人も、加齢と共にだんだん歯並びが悪くなってくる理由です。

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    では、臼歯を直立させたらどうなるか。

    臼歯の辺縁隆線にはステップがつき、コンタクトは緩くなりますので、叢生予防目的で行うことはお薦め出来ません。

    この症例のように、外科的矯正治療を避けるためであれば OKだと思います。

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    なので、綺麗な歯並びを維持してゆくためには、何かしらの保定が必要です。
    一番良いのは、一般歯科でナイトガードを作って貰い(保険で出来ます)、きちんと咬合調整されたナイトガードを毎日就寝時にしようすること、これは矯正をした人もしていない人も、です。
    矯正をした人は、ナイトガードを就寝時のみ使用するのでは不十分ですので、前歯の舌側に細いワイヤーで保定してやることが必要、ということです。

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    Conclusionとして、「矯正歯科の長期安定」は、下顎前歯の叢生だけではない、出っ歯の治療が出っ歯に戻らずに安定していること、受け口の治療が受け口にならずに安定していること、開咬の治療後に開咬が再発せず安定すること、などなど、そのためにはどうするのが良いか、などなどを理解していただくために、以下のようにまとめました。
    「と思う」とか、「気がする」と書いたのは、私の私見で、今回は文献などを示していないためです。

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    1. Deep biteを極端に浅く仕上げる:必ず必要だが、著しい Brachyでは、だんだん深くなってきてしまう傾向があるので、Fixed retainerに加え、就寝時には きちんと咬合調整された上顎型ナイトガードを併用することが望ましいと思う。クリアーリテーナーやアライナーは、臼歯の離開を招くので逆効果。Over treatmentで edge to edgeに仕上げると、ずっと その状態を維持している症例があるので、E-Eは良くない。1×1mmくらいに仕上げるのが良いと思う。

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    2. Large overjetを edge to edgeで仕上げる(C/2をC/3に):これは必要だと思う。ずっと E-Eで変わらない患者さんもいるが、習癖、態癖関与している患者さんでは、あまり有効で無いこともある。

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    3. Open biteを深く仕上げる:舌癖関与の未成年患者では、深く仕上げても開咬が再発するが、深く仕上げることは必要だと思う。成人のほうが予後良好で、特に リンガルでの治療は開咬の治療に対して非常に有効であるように思う。

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    4. 反対咬合症例を上顎前突で仕上げる(C/3をC/2に):有効かつ必要。Growth control を行って治療終了した C/3症例は、そうでない症例に比べて、予後良好だと思う。成人の camouflage treatmentは長期安定せずに再治療になることが多いように思う。

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    5. 捻転歯の Over correction:あまり有効とは言えないと思う。

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    6. 捻転歯の Septotomy:あまり有効とは言えないと思う。(患者さんを苦しめるだけで、効果が実感できない)。

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    7. Midlineの Over correction:徐々に戻って、on lineで落ち着く症例もあるが、ずっとズレが残る場合があるので、Brace off時にはキッチリ合わせたほうが良いと思う。

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    8. 上顎2など、舌側転位歯の Over correction:一旦唇側に振ってから戻すover treatmentは過去に何度か行ったが、それでも戻ってしまう症例が多いように思う。Torque controlは絶対必要。

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    9. 上顎正中離開:絶対に永久保定が必要。正中の歯肉線維の切断は必ず行う。

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    10. 埋伏智歯の抜歯:叢生発現とは関係が無いとしても、7を守るために抜歯は必要。

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    11. Ext caseの方が Non-ext caseよりも治療後の安定が良い?:そんな気がする、、、。だから extした方が良い、ということではないです。

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    12. Labialよりも Lingualの方が長期安定している症例が多い?:そんな気がする。

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    と締めくくって、講演を終えました。

    今回のプレゼンは 1ヶ月以上前から、毎朝 4時 5時に起きて診療室に向かい、診療の始まる 10時までプレゼン準備、診療が終わってからも毎晩居残って、家族の晩御飯タイムの 20時まで準備して、完成したのが発表前日の 12/14日土曜日の深夜。
    30分間という超ショートレクチャーで、自分の言いたいことをまとめるのは本当に大変だったけど、長期保定の必要性や犬歯間幅径の問題などについての私の考えだけでなく、私が行っているリンガルの治療のレベルを御覧頂けたと思います。

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    講演が終わったら、会場内の GPの先生から質問が。
    「長期安定研究会」なのに、何故 fixedが入っているのか、それでは長期安定とは言えないじゃないか、とのこと。
    上記、※1, 2について説明した筈なんですが、リテーナーしか見ていなかったのかな、、これ以上説明しても GPの先生に理解して貰うことは無理か、、それとも、私のプレゼンがいけなくて理解して貰えなかったのか、、。

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    翌日、私の講演を SNSで誹謗中傷する者 (youtuber?  influencer?)が出て来ました。
    人それぞれ、考えている事も違うし、捉え方も違いますので、別に私のプレゼンをどう思うかは自由ですが、会場で Discussionせずに SNSで、しかも公開限定なしの worldwideで個人批判を書くというのは、常識的にどうかと思います(まあ、youtuberとか  influencerってのはそうゆうもんだと思いますが)。
    この influencerは、筒井先生の「年をとるということは壊れていくこと」というお言葉に感動したらしく「金言」と書いていますが、でも皆さん、考えてみてください。
    例えば、家でも車でも電化製品でも、長年使っていれば壊れて来ますので、歯だって歳と共に悪くなりますし、歯並びだって経年的に悪くなってくるのは当たり前のことなんです(※2で説明しました)。
    この influencerは、「長期安定には長期保定が必要というのが共通した意見とすれば、僕はそこに挑戦したいですね。」と書いていますが(^^;)、経年的に下顎前歯に叢生が出来るメカニズムを説明した筈ですが、、日矯認定医も持っていない先生に理解して貰うのは無理か、、。

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    経年的に下顎前歯に叢生が出来ないようにする方法は無いのか?

    それは 1つだけあります。
    「噛まないこと」です。
    食事は全て流動食で、「噛む」ということを一切しない。

    寝るときも口を開いて寝る。
    起きているときも寝ている時も、上顎の歯と下顎の歯が当たらない様にする。

    そうすれば死ぬまで綺麗な歯並びでいられる筈です。

    でも、そんなことは不可能ですから、私は上下前歯に Fixedを入れて、審美的にも機能的にも重要な部分を長期きれいに保って、患者さんに喜んで頂けるようにしているわけです。

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    この influencerの FBの投稿に対し、LTSOAの役員の先生方がみんな何一つ反論さえせずに「イイネ」しているのを見て、呆れました。

    「方法論が違う」んじゃなくて、この先生達も ※1,2をわかっていないということです。

    私の考えている事は、この先生達と違うと思いますので、この研究会は退会しました。

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    今年もあと10日です。
    来年の皆様の御健康と御多幸をお祈り申し上げます。

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    P.S.

    会場では、ひろ先生、って声をかけてくれた先生が、、誰かと思えば、1990年に Tucsonで #62 Tweed courseを受けた時の同期生、ひだ先生とふくい先生じゃないですか!
    ビックリ!

    この先生達、凄かったんですよ、めっちゃ凄い!

    完全に負けました。

    懐かしいですね。

    お二人とも当時と変わらず、若くてお美しいままで、感激しました。

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    会場には私専用の控え室を用意してくださり、感激でした。

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    JLOAの先生達が一緒に写真を撮ってくれと、いらっしゃいました。

    なんでだろう〜(^^;)

    こわ〜い、、(^^;)
    JLOAは開業当時入会し、毎年参加してきましたが、退会しました。

    なんでだろう〜、、。

    でも、こうやって来てくださると、嬉しいです。

    先生方、リンガルは矯正歯科で最高峰、最も難しいテクニックです。

    先生達は、若い先生達の指導をし、お手本とならなければならない存在です。

    自分は Lingual orthodontistだという誇りを持って、ハイブリッドリンガルなどという、アレな治療はヤメてください。

    アライナーやインビザは マルチブラケットが出来ない 歯科医師にやらせておけば良いです。

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  • 第83回日本矯正歯科学会開催さる

    2024年10月29日〜31日、パシフィコ横浜にて、東京科学大学教授 森山啓司先生大会長のもと、第83回日本矯正歯科学会大会が開催されました。

     

     

    私は日本矯正歯科学会臨床指導医であり、5年毎に更新が必要です。

    更新期限まであと 2年あるのですが、症例提出は患者さんの同意書が必要であり、早めに済ませておきたいので、本学会ではいつもどおりリンガルマルチブラケット法で治療をした症例を提出、無事合格しました。

     

     

     

    本大会では、必ず聞きたい講演がいくつかあり、3日間、第1会場と第2会場を行ったり来たり、朝から晩まで聞きたい講演を全て拝聴することが出来ました。

     

    まず29日、15時から生涯研修セミナー、「ビスホスホネート製剤と歯科治療」というテーマでは、福岡歯科大学教授 池邉哲郎先生が「薬剤関連顎骨壊死MRONJポジションペーパー2023の背景と今後の課題」、大阪府立病院 道上敏美先生が「小児におけるビスホスホネート治療」、松本歯科大学教授 田口明先生が「薬剤関連顎骨壊死のポジションペーパー2023の概要」について講演されました。

    骨粗鬆症の治療薬であるビスホスホネート製剤を服用している患者さんに観血処置を行うと、顎骨壊死を起こすことが知られており、私たちが日頃非常に神経を尖らせているところです。

     

    患者さんの中には、御自身の身体の不具合を隠していたり、歯医者に関係ないと勝手に判断して服用している薬剤を申し出てくれない人もいるからです。

    私の知っている限りでは、ビスホスホネート製剤が直接顎骨壊死を起こすのではなく、観血処置後の感染が顎骨壊死を招くのであり、処置後の感染対策をしっかり行えば大丈夫、と認識していました。

    先生方の講演を聴き、私の知識は間違ってはいなかった、つまり、顎骨壊死は観血処置を行う以前から存在していることが多いこと、観血処置のために投薬中止をしてはならないということを再確認しました。

     

    16:30からのサテライトセミナーは、「外科的矯正治療の今」というテーマで、東京歯科大学准教授 菅原圭亮先生が「デジタルテクノロジーを駆使した外科的矯正治療の今」、東北大学教授 山内健介先生が「顎矯正手術の現在と未来」、大阪大学准教授 黒坂寛先生が「骨延長術を伴う顎変形治療における診断と治療」という演題で講演されました。

    最近の外科矯正にはdigital dataは不可欠ですが、東京歯科大学では学生教育にも Apple vision Proを用いているのには驚きました。

     

    ひろ矯正歯科は顎口腔機能診断施設であり、外科矯正治療も健康保険適用となります。

    過去には松本歯科大学信州大学と連携し、SSROだけでなく、2 jaw surgeryをも多数行って来ましたが、最近では、外科矯正症例はオペも矯正治療も松本歯科大学に依頼していました。

    その理由として、オペの際には、顎位確認のために私がオペ室に入る必要があるのですが、某先生が執刀されていた頃は、オペが時間どおりに進まず、私がオペ室から引き上げる時間が大幅に遅れ、オペ当日の午後、ひろ矯正歯科に来院される患者さんを非常に長時間お待たせしてしまうことが多かったためです。

    ところが、矯正治療をどうしても ひろ矯正歯科で行わなければならない患者さんがいらっしゃって、ひろ矯正歯科での外科矯正を復活することとなりました。

    ちなみに、松本歯科大学口腔外科の名誉のために記しますと、現在は、芳澤享子先生、栗原祐史先生の両教授のもと、外科矯正は佐藤工先生が執刀されており、難しいオペも安心して受けることが出来ます。

     

    29日の夜は勤務医の村上先生と芽生先生と3人で食事をしました。

     

     

    30日朝イチの海外特別講演は、、、演者の名前は記しませんが、特別講演としてはあまりにも内容がアレで、聴いていた先生の殆ども同じように感じられたのではないでしょうか。

    非常に著名な先生ですが、日本の矯正歯科のレベルを知らないのかな、、。

     

    10:20からのシンポジウム1、「矯正歯科治療にける形態と機能の調和を目指して 側方的問題に対するアプローチ」では、Ferrara大学客員教授 Ute Schneider-Moser先生が「Unveiling the buccal corridor myth」、日大松戸教授 根岸慎一先生が「混合歯列期の口腔機能が歯列形態に及ぼす関連性について」、鶴見大学教授 友成博先生が「非対称症例の機能的問題と側方的問題に対するアプローチ」という演題名で講演されました。

    Uteは私がEBOを受けた際のExaminerである Dr. Lorenz Mozerの奥さんです。

    Buccal corridorやSmile archに関しては、日本でも20年近く前に本を書かれている先生もいますが、内容的には同意出来ない部分が多かったので、Uteの講演を聴いて、やはりあの本に書いてあることはオカシイ、私は正しかったナ、という確証が得られました。

     

    30日午後は臨床セミナー、「歯科矯正用アンカースクリューを用いた臨床をアップデートする」というテーマで、東京科学大学助教 上園将慶先生が「皮質骨に固定源を求める新型歯科矯正用アンカースクリューによる矯正歯科治療の試み」、東京歯科大学講師 立木千恵先生が「矯正歯科用アンカースクリューの適応を拡げる」、Kyung Hee大学教授 Won moon先生が「Could we advance Maxilla in Mature Patients Non-surgically? Non-surgical Class III Orthopedic Correction with MSE and FM: Growing vs Nongrowing Patients」という演題で講演されました。

    MIAの長さは維持とは相関が無いというデータがあり、特に上顎正中部にMIAを打つ場合には洞との関係から短い方が望ましいと思っておりましたので、上園先生の大径の短いスクリューは安全で脱落しにくいと思われ、早く使いたいと思いました。

     

    16時からのワークショップは「矯正歯科専門医制度の認定と今後について」というテーマで、日大名誉教授 清水典佳先生が「矯正歯科専門医制度認定までの道程」、鶴見大学教授 友成博先生が「日本歯科専門医機構認定矯正歯科専門医制度の概要と取り組み」、九州歯科大学教授 川元龍夫先生が「新たな矯正歯科専門医制度における研修施設に求められる教育要件」、奈良県 岡下慎太郎先生が「これから新しく専門医を取得するために留意すべきポイント」について講演されました。

     

    「矯正歯科専門医」に関しては、過去の院長日誌に書いたように日本成人矯正歯科学会と、日本矯正歯科協会が「矯正歯科専門医」という用語を使い始めたために、厚労省のほうから3つの異なる団体にそれぞれ矯正専門医があるのはおかしい、1つにするように、という指導があり、2019年より「日本矯正歯科学会専門医」という用語が使えなくなり、日本矯正歯科学会学会は「臨床指導医」という、患者さんにとって非常にわかりにくい語句を使用せざるを得なくなりました。

    この問題解消のために、非常に永い間、日本矯正歯科学会の役員の先生方が大変な苦労をされてきました。

    迷惑したのは、日矯学会の役員の先生方だけでなく、専門医の資格を有する会員も、非常に大きな迷惑を被ってきました。

    私は、個人的には、このような行為は日本矯正歯科学会会員としてあるまじき行為で、私流に考えると、日本矯正歯科学会会員資格の剥奪、学会から除名すべきだと常々思っておりました。

     

    ただし、こうゆう輩は、除名すれば、不当だと訴訟を起こしてくることが当然予想されますので、これらの迷惑行為を行っている日矯会員には、迷惑行為をやめるか日本矯正歯科学会を辞めるか、どちらかを自分で選択するようにさせ、自分で決めさせれば良いと思います。

    会規がそうなっていないから無理だと言う先生がいますが、それならば会規を改めれば良いのです。

    そこのへんをじつに上手く、波風立たないように、大人対応をされた日矯学会の先生達は流石で、頭が下がります。

    長年、お疲れ様でした、有り難うございました。

    そのおかげで、今現在、「矯正専門医」という用語はやっと使用することが可能となりました。

     

    ただし、いくつか条件があり、表記するには「日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医」と記すこと、ホームページは矯正料金やリスクなどが公開されている等々、委員会の審査を通過しなければなりません。

    認定された「日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医」の中には、HPに料金もリスクも掲載されていない医院や、料金が掲載されていても、実際にかかる料金とは違う、自分が他よりも優れているという表現がされている、などという医院も存在します。

    ひろ矯正歯科の公式ホームページでは、これらはきちんと公開しており、料金に関しても、記載と違うような料金を請求されるなどということは絶対にありませんので御安心下さい。

     

    朝、ホテルからは富士山が見えました。

     

     

    31日は9時から Washington大学教授  Greg J Huang先生の「Aligners: Past, Present, and Future」という演題で、アライナーの 20年以上前の RCTから未来について講演されました。

    アライナーは一時期もの凄い勢いで増えていましたが、最近、アライナーの問題点を理解する先生が増えたのでしょうか、少し勢いが衰えたように感じます。

    ひろ矯正歯科では、現時点では基本的にアライナー矯正は行わず、真面目にマルチブラケットで治療を行っています。

    リンガルマルチブラケット法で少しだけ歯の移動を行った後、アライナーで誤魔化す、などというインチキもしません。

     

    12:40からの創立100周年記念学術研究プロジェクトセッションでは、福岡歯科大教授 玉置幸雄先生etc.が「日本におけるマウスピース型矯正装置の問題」、東京科学大学教授 小野卓史先生が「咬合-味覚-糖代謝関連:矯正歯科から糖尿病への新提案」、明海大学教授 須田直人先生が「日本における口唇裂・口蓋裂児の術前顎矯正の治療指針作成に向けた多機関(施設)評価 -動的矯正治療開始時の咬合不正の軽症化に向けて-」、岩手医大教授 佐藤和朗先生が「歯科矯正材料のMRI検査に及ぼす影響について」講演されました。

    矯正治療中のMRI撮影に関しては、ひろ矯正歯科の公式ホームページにて公開しているとおり、撮影条件を工夫すれば、矯正装置が入っていても、保定のワイヤーが入っていても、問題なくMRIは撮影可能で、脳(海馬)や顎関節も撮影可能です。

     

    15時からのシンポジウム2では「矯正歯科治療における形態と機能の調和を目指して -垂直的問題に対するアプローチ」というテーマで、北海道医療大学教授 飯嶋雅弘先生が「垂直的問題を有する不正咬合に対する成長期の矯正治療」、東京歯科大学教授 西井康先生が「咀嚼筋と顎骨骨質の関係そして矯正治療後の安定性」、九州歯科大学講師 郡司掛香織先生が「当分野で行っている垂直的問題に対する外科的矯正治療」、広島県 小川晴也先生が「垂直的問題に対してアプローチを行った矯正歯科治療の長期保定 -開咬の術後長期経過からの考察-」について講演されました。

     

    今回の日本矯正歯科学会は、「矯正歯科専門医」の件で、記念すべき大会であったと思います。

    「日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医」を取るには、日本矯正歯科学会の認定医を持っていることが条件であり、その条件となる日矯認定医を取るには、最低2年間の基本研修機関での研修、そのあと最低3年間の臨床研修機関での研修を行わないと、認定医試験を受験することが出来ません。

     

    現状の大きな問題点として、先生によっては諸々の事情で基本研修機関に残れないことがあります。

    特に女性の歯科医師は、妊娠、出産などや、家族の事情等によって、やむなく大学に残ることを断念した、という先生が多く存在します。

    認定医や専門医の目的が、「患者さんが安心して矯正治療を受けられるようにすること」であるならば、基本研修機関で研鑽することが出来なかった歯科医師に対しては、

    • 日本矯正歯科学会が認定医用の矯正学基本的研修カリキュラムを作成し
    • 研修指導医のいる臨床研修機関(矯正歯科専門開業医)において所定の年数以上履修する
    • 研修を修了した歯科医師に対しては、日本矯正歯科学会が筆記試験、実技試験、口頭試問等々を行い、認定医としての基本的知識レベルが問題ないと評価された歯科医師に関しては、基本研修修了とし、
    • 引き続き、最低3年間以上の臨床研修に移行する

    などの救済策を作り、大学に残れなかった歯科医師にも日本矯正歯科学会認定医試験の受験のチャンスを与える、ということが必要であると考えます。

    これは、海外では既に行われていることであり、日本では、例えば「大検」のように、高校を卒業出来なかった人にも大学受験資格を与える、ということが行われています。

    日本に存在する最大かつ最高権威の矯正歯科学会という学術団体として、御一考頂けることを希望します。

     

    本学会では、学術展示171題も目を通してきました。

    非常に濃い3日間でした。

    次回は 2025年9月29日から、札幌コンベンションセンターにて開催されます。

     

     

    折角横浜に来たんだからと、帰り道、中華街に寄りました。

    焼き小籠包は、いつも火傷するアツアツでしたが、この日は3軒食べてもみんな冷たくて、美味しくなかったです。

     

     

  • 矯正専門医

    自分は、テレビはあまり見ないほうですが、毎週、これだけは録画しても必ず見るという番組があります。

    日曜日の朝 8時から BSでやっている 「ゴルフ侍」 という番組で、腕に覚えのあるアマチュアがプロと対戦するというものです。

     

     

    プロは、第一線のツアーから退いたシニアで、年配の方は 70才を超えていることもあります。

    しかも、そのコースは番組収録で初めて回るというプロもいます。

    一方、アマチュアは、年に何十回もラウンドしている自分のホームコースで、コース攻略法も、落とし穴も全て知り尽くしており、幾度かクラブチャンピオンになっている、番組が選りすぐったアマチュアで、自分でも相当の自信があって出てきている筈ですので、条件的にはアマチュアが断然有利な筈です。

    ところが戦績は、2024年 2月 18日の時点で、プロが 415勝、アマチュアが 84勝、59引き分け、と、プロの圧勝です。

     

    結果も然りですが、見ていると、アマチュアとプロはゴルフの内容とレベルが全く違います。

    プロとアマチュアの決定的に違う部分、それは、プロはアマチュアのような、あり得ないような失敗をしない、そして、キチンと結果を出す、ということです(中には超下手くそなプロもいますが、、)。

     

    有名なプロが言うには、アマがプロに勝てないのは、練習量の違いもさることながら、「考えていることが違う」からだそうです。

    何を言いたいか、、、ゴルフの話ではなく、矯正歯科の話です。

    以前、非常に大規模な小児・矯正歯科の先生の医院にお邪魔した際、院長先生から「廣くん、症例検討会に出るか?」と聞かれたので、出ました。

    そこの勤務医のプレゼン中、「なんでそうなるのかなあ、、」と思い、聞いていました。

    プレゼンが終わった後、院長先生から「廣くん、何かあるか?」と聞かれたので、「この患者さんの主訴は何ですか?」と聞いたら、院長は真っ赤な顔をして怒り出し、「廣くんなあ! この子らには、まだそんな事教えてへんのや! あまり変な事言わんといてくれるかな!」と怒鳴られました。

     

     

    別に怒られるような事は何も言っていないので、唖然として返す言葉を失いましたが、この先生達は、患者さんを治療する上で最も大切な「患者さんの主訴」を知ろうともせず、レントゲンと歯列模型だけを見て「歯並べ」をしようとしている、つまり、その医院の矯正の患者さんの殆どは小児歯科治療からの持ち上がりで、患者さんが矯正治療を希望していないことが多いので、主訴を聞かれて激怒したのでした。

     

    かかりつけの一般歯科や小児歯科の先生(以下GPオルソ)に矯正を勧められたので治療を開始したが、何年経っても治らない、と、ひろ矯正歯科に泣きついてくる患者さんが毎年相当数います。

    混合歯列期にパノラマを撮って、側方歯群が重なっている、これはアゴが小さいからだ、だからアゴを拡げる治療をしないといけない、と言ってアゴを拡げるのです。

     

    でも、混合歯列期にパノラマを撮れば、側方歯群が重なって写るのは当たり前のことで、重なっているから隙間が足りない、アゴを拡げないといけない、というのは間違っているのですが、それを知らない先生が非常に多いです(GPオルソだけでなく、矯正専門医にもいます)。

     

    (症例 1)

    7才 10ヶ月の女の子のパノラマで、未萌出永久歯が重なり合って、永久歯が入りきらないように見えますが、女の子の成長のピークは概ね 11才くらい、これから身体もアゴも成長する時期です。一般歯科でアゴを拡げると言われて、セカンドオピニオンで来院されました。

     

    経過観察して 11才 9ヶ月の時のパノラマです。アゴを拡げてはいませんし、第一段階の治療も何もしていませんが、永久歯萌出後、叢生は殆どありませんでしたので、非抜歯で矯正治療を行いました。

     

     

    (症例 2)

    9才 8ヶ月の男の子のパノラマで、症例 1と同じように未萌出永久歯が重なり合って、永久歯が入りきらないように見えます。やはり、一般歯科でアゴを拡げると言われて、セカンドオピニオンで来院されました。男の子の成長のピークは概ね 14才くらい、これから身体もアゴも成長する時期ですので、このまま経過を観察しました。

     

    経過観察して 12才 8ヶ月の時のパノラマです。アゴを拡げてはいませんし、第一段階の治療も何もしていませんが、永久歯は問題なく生え、非抜歯で矯正治療を行いました。

    治療経過など、詳細はまた別の機会に御紹介します。

     

     

    GPオルソがホームページにアップしている治療例を見ると、専門医よりも安い費用で、専門医と同じような矯正治療が受けられるように書かれていることが多いですが、治療中に不信感からひろ矯正歯科に相談に来られた患者さんの中には、その不適切な処置がなければ何でもない症例だったのに、その処置のせいで外科矯正(アゴ切りの手術です)を余儀なくされた、本当に気の毒な患者さんもいました。

     

    GPオルソと私達矯正専門医との違いは、「ゴルフ侍」のアマチュアとプロの違いです。

    GPオルソの殆どは、歯科大学を卒業してから一般歯科医としてスタートし、一般診療のかたわら収入アップを目的とする矯正セミナーなどを受けて、矯正治療を始めたという先生で、矯正歯科の専門教育を受けていません。

     

    一方、矯正専門医の多くは、大学卒業と同時に大学の医局に残り、矯正歯科専門医を目指して何年も矯正歯科一筋に勉強します。

    こうゆう背景の違いでしょうか、GPオルソの先生と話していると、私達矯正専門医とは本質的に考え方が違うと感じることが非常に多いです。

    ただ、症例数に関しては、大規模小児歯科などは矯正専門医よりも多いことがあります。

    これは、虫歯治療で来院した小児の患者さんをエスカレーター式に矯正治療に誘導してゆくためですが、治療の方法、治療内容や治療結果は全く違うことが多いと感じます。

     

     

     

     

    日々診療してると、こんなアフォみたいな DMや SNS広告が毎日送られて来ます。

    金、金、金、金、そんなに金が欲しければ歯医者をやめて、他の仕事をすれば良いと思います。

    こうゆう会社が成立するのは、それを申し込むアフォな歯医者が多いからに他なりません。

     

     

    矯正専門医とは何か?

    ひろ矯正歯科の HPには、患者さんが相談できる「相談室」があります。

    私からの返事には、決まり文句のように、「日本矯正歯科学会の臨床指導医の先生のところに行ってください」と書いていますが、その理由は、「日本で最高の矯正歯科学会が認めた専門医(臨床指導医)」は、GPオルソの先生達が普通にやらかしてしまうような、とんでもない失敗をする心配がない、というのがその理由です。

     

    日本矯正歯科学会の臨床指導医の先生は、日本矯正歯科学会の HPから検索する事が出来ます。

     

     

    医療ですから、全て完璧ということはありませんし、プロゴルファーの中にも「超下手くそ」がいるように、矯正歯科専門開業している先生にも知識や力量に差があるのが当然です。

    私は自分の治療が完璧とは思っていませんし、全ての患者さんを 100点満点で終わっているなどとは思っていませんが、患者さんに満足して頂けるよう、他の専門医からも尊敬されるような矯正医でありたいと、毎日一生懸命精一杯頑張って診療しています。

    おかげさまで、私が治療した患者さんが結婚されて、お子さんや配偶者を連れてきてくれるのは、私の腕を信頼されているからだと思います。

     

    舌側矯正に関しては、私が舌側矯正を始めた 30年前は、舌側矯正は治療期間が長く、ちゃんと治らないと信じられており、実際に、世界で有名だと言われていた先生達でさえ、間違った通説を信じて治療し、臼歯部には外側に装置を付け、治療のレベルも低くて、見ていて絶句する事が多々ありました。

    私が 2005年に舌側矯正で EBOに挑んだのは、リンガルでもラビアルと同じ治療期間で同じ治療結果が得られるということを証明するために、第三者に評価してもらうのが目的であり、自己研鑽のためでした。

    先日、歯科医師会の書類を読んでいたら、某先生の略歴に「EBO(ヨーロッパ上級矯正専門医)」と書いてあるので、「は? 上級って何だ?」と思って、Yahooに「ヨーロッパ上級矯正専門医」と入力してみると、「ヨーロッパ上級矯正専門医」とホームページに書いている先生が EBO holder 日本人 11名の中で 4人いることがわかりました。

    しかもその 4人は全員、日本矯正歯科学会臨床指導医。

    European Board of Orthodonticsは、日本語では「ヨーロッパ矯正歯科専門医」であり、「advanced」、「senior」、「upper superior」などの上級を意味する語句は何処にも付いていません。

    4人の中には HPに「アジア人で初めて合格」と書いている先生もいますが(この人が最初に「上級」をつけ加えたようです)、これは当時の主任教授がこの先生に EBO受験の機会を与えただけであって、誰も受からない難しい試験に初めて合格したアジア人ではありません。

    「上級」の先生に連絡してみると、返って来たのは、サイトは自分では修正出来ないとか、EBOの試験は昔と今は違うとか、おかしな言い訳を並べたてるので、試験の内容について EBO事務局に問い合わせてみましたが、試験は昔も今も何も変わっていないという返事が返って来ました。

    この「上級」の 4人、HPを見ると、EBOを宣伝目的で使っているのが丸出しですが、これは EBOの本来の目的・規約違反の筈です。

    一体、この人達は、何を目的で専門医試験を受けているのでしょうか。

    自己研鑽、第三者評価が目的じゃ無いのでしょうか。

    こうゆうことをする人がいるから、海外の試験に日本人が Apply出来なくなるのだということがわからないのでしょうか。

     

    EBOの HPに掲載されている EBOの目的には、“EBO for your advertisement”などとは書かれていません。

     

     

    勝手に「上級」を付け加えるのは、厚労省広告規制の「患者に誤解を与える表現」、「自分が他よりも優れているかの表現」、「事実と異なる記載」等に該当する筈です。

    医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン)を読んでも、明らかに違反事項だと思います。

     

    「上級」と付けている人がいるから自分も「上級」を付ける、私はそんなアホなことは死んでもしませんが、真面目に矯正専門医をやっている者からすると、何とも不愉快な話であり、由々しき問題であると思います。

    自分が日本で最高の「日本矯正歯科学会専門医」であるという誇りと、自覚を持って欲しいと切に思います。

    私はこんな専門医には なりたくないです。

     

    これを読んで、私を悪者にして騒ぐ先生がいると思いますが、御自由にしてください。

    私は、おかしいものはおかしい、間違っている物は間違っている、そんなことも言えない人間にはなりたくないです。

     

    患者さんの皆さん、歯医者選びは慎重に、一般歯科で矯正治療を受けるのは、やめてください。

    特にアライナー、インビザラインなどのマウスピース矯正を患者さんに勧める GPオルソが増えていますが、トラブルが物凄く多いです。

    取り返しのつかない事になってからでは遅いです。

    矯正治療は日本矯正歯科学会の臨床指導医の先生のところで受けて下さい。

     

     

     

     

     

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