2011年4月2日~4日、World Society of Lingual Orthodontic Meetingが大阪国際会議場にて開催されました。
本学会では、御指名により、Pre-congress courseの講師と、4月3日の最終演題に講演をさせて頂きました。
学会の開会の挨拶は、震災で亡くなられた方々への1分間の黙祷から始まりました。
津波に家族をさらわれ、地震以後、家族と会っていない、でも、何処かで生きていると信じて、一生懸命頑張って生きている人達を想うと、涙が出ました。
自分だったら、生きてゆける自信はありません。
気が狂ってしまうと思います。
被災された方々の精神的ケアと、1日も早い復興をお祈りいたします。
この原発事故の影響で、海外からの先生の多くはキャンセルとなりましたが、日本語の話せない先生が、「がんばれ日本、負けるな日本」と、カタコトで言ってくれたり、そう書いたスライドが出てくる度に、泣けてきました。
学術大会前日、2日の土曜日は Pre-congress courseです。
有名な日本人・イタリア人の部屋は小さい部屋で参加者も10名程度なのに、私のコースは、約 90名ほどの先生達が受講してくださり、会場はなんと、学会のメインコングレスの部屋!
有り難いことです。
私のコースの内容は、3種類のワイヤーベンディングと、舌側矯正のレクチャーです。
本当にたくさんの先生が参加してくださいました。
じつは、この3つの wire bendingは、それぞれがリンクしています。
最初に行った Breakfast menuは、臨床でのワイヤーベンディングのスキルアップに直結するトレーニングです。
2つ目は、前歯にベンドを入れると臼歯にどうゆうトルクが入り、どうゆうハイトの違いが出るか、臼歯にベンドを入れると前歯にどうゆう影響が出るかということを再確認することを目的として、また同時に、レクタンギュラーワイヤーを余計なトルクや傾斜が入らないように、正確に曲げる練習です。
この2本目までを午前中に終了させ、昼食のあとは珈琲でも飲みながら質疑応答、午後は臨床に使うワイヤーを曲げる練習をして、レクチャーに入る予定でした。
ところが、、、思ったより先生方のワイヤーベンディングが捗らず、結局2つ目のメニューは、最後まで曲げるのを断念、3つめの Clinical exerciseに入りました。
これは、1725の Beta Titan wireを使って、Lingualの mushroom archを屈曲し、前歯部に Buccal Crown Torqueを入れる練習、そのあと Gable Bendを組み込んで、実際の治療で Space closingに用いるワイヤーを曲げて頂きました。
これらの wire bendingに予想以上に時間がかかってしまい、一部の先生からの fundamentalな質問も加えて、予想外の 超・ウルトラ・ディレイ。
レクチャーの方は大急ぎで行いましたので、ブーイングが出るかな、と少し覚悟していましたが、終わるやいなや、国内外のたくさんの先生達から、「前歯部のトルクがあんなに簡単に入れられるとは知らなかった」、「知らないことをいっぱい教えて貰えた」等々、絶賛のお言葉を頂きました。
急ぎましたが、ポイントは飛ばさずしっかりおさえましたので、御理解いただけたでしょうか。
学会終了後、コースに参加していた小児歯科の先生から 「しょーもないコースやりやがって! 居波がどれだけ迷惑してるかわかってんのか!」と言われましたが、私は 1円たりとも謝礼は受け取っていません。
コース参加料がいくらか知りませんが、仮に5万円だとすると、450万円ほど学会に貢献しているわけです。
居波先生から頼むから助けてくれと言われてコースを引き受けて、多大な貢献をしているのに、御礼も言わないというのはどうなんでしょうか。
それと、この小児歯科の先生、WSLOに何しに来たのか知りませんが、小児歯科専門医の先生にはリンガルは必要無いし、無理でしょう。
失敗したらリンガルが悪く言われるので、やめて貰いたいです。
学会最終日の講演は、”Doctor, can you treat me with Lingual Orthodontics?”という演題で、リンガルは治療期間が長く、ちゃんと治らないからやめた方が良いという歯科医師が多いが、それは間違っているということについて、実例を示して証明しました。
今回の学会では、日本矯正歯科学会会長の後藤教授をはじめとする日本の国公立・私立大学の教授達がたくさん参加しておられました。
外国では、たくさんの Professors & Chairmen がリンガルの学会に参加しますが、日本でのリンガルの学会に大学の教授が参加するというのは、珍しいことです。
これにはいろいろ理由があるのでしょうが、一番の理由は、リンガルに対するイメージ、すなわち、「リンガルをやっている奴ら=金目当て」、「リンガルをやっている奴ら=まともな治療をしていない」、「リンガル≠矯正歯科、リンガル=美容矯正」といった公式が成り立っているからだと、私は考えます。
そして、そうゆう評価を受けるのは何故なのか、リンガルをやっている先生達は自分の胸に手を当ててよく考えて頂きたいものです。
私はリンガルの治療に際しては、資料、診断、治療内容、治療結果、治療後の安定性、どれをとっても通常の矯正以上であるように、何処のどんな試験官がみてもお墨付きを頂けるような治療であるべく、精一杯頑張っています。
御参加いただいた教授達には、リンガルはファッションではない、リンガルは患者集めの手段ではない、これだけきちんと治療している者もいるのだ、ということを伝えたかったので、演題もその内容に焦点を合わせましたが、伝わりましたでしょうか、、。
黒いスーツが Brazilの Dr.Arima。 彼の Board caseは今回の candidatesの中で最も素晴らしい治療であったと聞いています。
学会が終わった後、Dr.Svitlana Babiiが塩尻の私のオフィスまで見学に来られました。
彼女の住む Odessaは、人口100万人で、専門医は50人くらい、歯科医院の数は美容院の数よりも多い、とのことです。
リンガルについて教えてくれる環境がない、教えてくれる人もいないとのこと。
2日間滞在されましたので、一通りのラボワークをお教えし、臨床見学と、困っている症例についての相談を受けましたので、私ならこう治す、とアドバイスをさせて頂きました。
何一つ隠さず、私の知っていることは全てお教えしましたが、御理解いただけたでしょうか、、。
技工室にて、Hiro’s lab. work experience
技工士さんは英語が話せないので、勤務医の神谷貴志先生が付きっきりで教えます。
いつもどおり「かつ玄」で 一緒に晩御飯を。
ハイ、ポーズ!
次回のリンガルの学会は、2012年6月28日〜7月1日、Frankfortで行われます。
日本の大学の先生達がたくさん参加されることを希望します。
WSLOは、もうイイかな、、。
日本の舌側矯正の集まりである、JLOAの20周年記念大会が3月20日、大阪の中之島センタービルで開催されました。
特別講演として、今年のESLOのSecretaryの Germain Becker先生が来日されました。
Germain Becker先生です。
尊敬する松野先生 現JLOA会長です。
尊敬する小谷田先生
僭越ではございましたが、御指名でございましたので、
座長は私が務めさせて頂きました。
いつもは自分がCertificateを貰う立場ですが、
この日は僕がBecker先生にお渡ししました。
翌日は良いお天気で、奥様と奈良観光を楽しまれました。
Becker先生、鹿にビックリ!
今まで、学会などのブログは講演内容などもある程度紹介してきましたが、、、今回はオミットです。
何故か、、、。
書きたいけど書けない、、でも書かないと、わからないでしょうか、、。
学会や学術会は公の場であり、意見を交換するところです。
個人のアピールをしたり、個人のバッシングをする場ではないはずです。
講演内容までは学会側でチェック出来ないので、学会の落ち度ではなく、これは個人個人のモラルの問題です。
若手の先生方も、前夜、あれほどのバイタリティがあるなら、それを違うところで生せないのかなと思いました。
将来を担っているのですから、発表なども頑張って下さい。
昨年、イタリア国立フェラーラ大学歯学部矯正学講座から非常勤教授を拝命され、Mastersや Professor達を相手に講義をするために、2月21日、Ferrara Universityに行って参りました。
フェラーラ大学と言っても日本では御存知ない方が殆どだと思いますので、まず簡単に紹介したいと思います。
フェラーラ大学というのは、歴史を遡れば1392年に設立された、イタリア全土で2番目に古い、由緒正しい大学です(イタリアで一番最初に設立されたのは Bologna大学です)。
帰る朝、P.TTA DEL CASTELLOにて、、、モデル立ち!
イタリアの教育システムは、日本の 6-3-3-6(医科・歯科)とは異なり、Elementally schoolが 5年、 Middle schoolが 3年、High schoolが 5年、そして Dental schoolが 5年です。
18年間の教育を終了して、歯科医師国家試験に合格すれば歯科医師として働くことが可能になりますが、イタリアの歯科大学は全て国立ですから、イタリアで歯科医師になるということ自体、並大抵の事ではなく、イタリアの大学に入れないので、他国の大学に行くという人もいるそうです。
晴れて歯科医師免許下附となっても、矯正歯科専門医になるには、そのあと3年間の矯正専門の研修を積みます。
さらに上を目指して研鑽を積みたい先生は、1年以上の Master courseを履修します。
日本には現時点で 29校の歯学部が存在し、1学年の学生数は大学によって異なりますが、少ない大学では1学年約 40名程度、多い大学では 120名程度(間違っていたらごめんなさい)の学生が歯科医師を目指して勉強をしていますが、イタリアでは大学数は日本とほぼ同じであるものの、学生数は極端に少なく、例えば Ferrara Universityでは1学年16名(!)です。(ちなみに人口は日本が1億2700万、イタリアは5800万人です。)
どうりで、20年ほど前に C.H.Tweedの courseを Arizonaの Tucsonで受けた時も、イタリア人はたいへん優秀でした。
舌側矯正は1970年代半ばに debutし、現在 30余年が経過しました。
矯正治療の盛んなアメリカでは、国民性からか舌側矯正は殆ど行われていませんが、アジア・ヨーロッパでは非常に盛んに行われつつあります。
臨床に一生懸命なだけでなく、臨床を裏付け、サポートするための researchも In vivo, In vitro, Microscopic, pathological etc.、非常に多岐にわたって行われています。
日本の舌側矯正事情は後述するとして、現在、ヨーロッパの矯正歯科をリードするのは、フランスでは Paris V大学、ドイツでは Munster大学でしょう。
これらの大学はまさにヨーロッパだけでなく、世界中のThe Best of the Best、なぜなら舌側矯正は矯正歯科界の中でも頂点であり、モータースポーツで言えば Formula 1の世界です。
そんな凄い世界に、舌側矯正専門の Master courseが Ferrara大学に設立され、自分の約 20年間の舌側矯正に対する努力と治療のクオリティが認められ、非常勤教授として招かれましたので、僭越ではございますが、少しでもお役に立てればと思い、行って参りました。
留守の間、診療室を閉めなければならないし、飛行機代も少ししか出ないし、、正直困ったのですが、断るわけにもいかないので、講義の前夜にイタリアに到着し、翌朝から日没まで1日講義を行い、その翌朝に帰路に着くという2泊3日の、まるで弾丸トラベラーのような強行軍でした。
着後、Professor & Chairmanの Dr.Giuseppe Sicilianiと他の名高いProfessor達が Dinnerに招待してくれました(写真を撮る雰囲気ではなかったので、写真が無いのが残念です)。
宿泊は Ferrara大学から歩いて3分ほどの所にある4つ星ホテル、Hotel Principessa Leonaraを大学が用意してくれました。
このホテルは、これまた16世紀に設立された由緒正しき歴史的価値のあるホテルです。
最近の中●系資本のゴージャスホテルのように1泊5万も6万もする不当に高いホテルではありませんが、Private Gardenを備えた、静かでゆっくりとくつろげる素晴らしいホテルでした。
講義はこの部屋で行いました。
大学がまた歴史的建造物で、素晴らしい建物です。
お昼休みにシシリアーニ教授が大学の診療室を案内してくれました。診療室では8台のユニットが個室形式で配置されていました。
私の講義は、舌側矯正の歴史、インダイレクト・ボンディングの歴史、最新のマテリアルを使った Hiro systemのprocedureと、他の Indirect Bonding Systemとの比較、European Board of Orthodontistsの試験に提出した舌側矯正8症例の紹介、若年者(Low teen patients)に対する舌側矯正、さらに Lingual Straight Wire Appliance等について詳細に説明し、講義を行いました。
シシリアーニ教授からSTbについて聞かれ、「私は50症例ほど治療したが、今は使っていない」と、正直に言うと、顔色がかわりました、、(やべえ、、でも、嘘をつくよりイイかな、、。)。
他にもいろいろ話したかったのですが、時間切れでお見せすることが出来ませんでした。
やはり20年間を1日で話すのは無理です。
講義終了後、感謝状を頂きました。
向かって左の背広を着ているのが Professor & Chairmanの Dr.Siciliani、右のセーターを着ているのがProf.Scuzzoです。
その夜は Residentsと数名の教授達が晩御飯に連れて行ってくれました。
Pizza専門店で、みんなワイワイガヤガヤ、楽しいひとときでした。
僕の左側に座っているのが、イタリアの舌側矯正学会(Associazione Italiana Orthodonzia Linguale)の会長のDr.Lucci、右側の女性は、僕がEBOの試験管であり現 EBOの会長である Dr.Moserのすぐ近くで開業しているDr.Ganthallerです。
勉強する時・仕事をする時は一生懸命真剣に、ひとたびオフタイムとなれば、陽気で楽しい人達です。
翌朝、帰る支度をしたあと朝食を取りながら教授と話していると、イタリアの矯正歯科事情について話してくれました。
全く矯正のトレーニングを受けていない先生が1泊2日の矯正の講習会を受けただけで、矯正のブラケットを購入し、翌日から患者さんに矯正治療を勧める。
ホームページには舌側矯正の写真を掲載し、それを見た患者さんが舌側矯正を希望すると、舌側矯正はやめた方が良い、という先生はまだましなほうで、出来ないのに手を出して大変な結果になって泣きついてくる患者さんが後を絶たないそうです。
う~ん、日本と全く同じだ、、。
今や、治療を受ける側が選球眼を持たないといけない時代なんですね。
ひろ矯正歯科では、外側から治療するか、裏側から治療するかは全て患者さんに決めて貰っています。
ホームページを見て、舌側矯正をしたいから訪ねて行ったのに、いざ先生に舌側矯正希望である旨を話したら、あなたは例外的に無理だと言われて外側の治療になってしまった、ということはありませんので、ご安心下さい。
帰りの当日、朝食をすませて1時間ほど近所の散策に出掛けました。
ヨーロッパの街には至る所にこうゆう広場(Piazza)があり、憩いの場となっています。
P.TTA DEL CASTELLO前のPiazza Treno Triesteでは朝市をやっていました。
朝食は、こうゆうホテルではタダの事が多いのですが、このボローニャ・ソーセージといい、パンといい、とっても美味しいです。
Bologna空港からFerraraまで高速道路をカッ飛んで約1時間ですが、行きも帰りも大学の方が送迎してくださり、助かりました。
成田はポカポカの春のような陽気で半袖でしたが、松本はものすごい吹雪でした、、とほほ。