普段、映画やテレビなど、ほとんど見ない私ですが、お盆明けの日曜日に、TUTAYAで DVDを 2枚借りてきて見ました。
1枚は、石井光太氏原作、君塚良一氏監督の「遺体 明日への十日間」、もう一枚は、「EVEREST」です。
「遺体」は、2011.3.11の東日本大震災から十日間、岩手県釜石市の遺体安置所で、石井光太氏本人が見てきた報道では伝えきれていない現状を綴ったルポルタージュ『遺体 震災、津波の果てに』を実写映像化した作品です。
なぜこれを借りたかというと、塩筑歯科医師会の 6月例会で、茅野市のやつがね歯科の中村達弥先生が講演されたのがきっかけです。
一般の方々は御存知ないでしょうが、私達歯科医師のところには、時々、警察から身元不明遺体の特定に協力を要請するFAXが送られて来ます。
全く身元がわからない場合や、身体の損傷が激しく、顔や身体の特徴から身元を特定することが出来ない場合に、現存歯の本数や欠損状態、虫歯治療の箇所や状態から、カルテと照合し、本人を特定するものです。
法歯学の分野で、歯科的個人識別と言います。
中村先生は、警察協力歯科医として御活躍されており、東日本大震災の際には、現地に赴かれて、被災者の身元確認作業をされており、その準備から現地での苦労などを学術例会でお話されました。
中村先生の講演は内容も話し方も素晴らしく、時間も予定どおりキッチリと終わられて、とても素晴らしいものでした。
講演の終わりに、中村先生がこの映画の事を紹介され、非常に正確に現場の様子が再現されているとのことでしたので、以前から一度見てみたいと思っていました。
柳葉敏郎が歯科医の役を演じていますが、映画で使われる語句も実際の臨床と同じで、非常にリアルです。
かなりショッキングな内容で、自分は入り込んでしまい、涙が止まりませんでした。
皆さんにも是非見て頂きたい映画です。
もう一枚の「EVEREST」は、エヴェレストの山頂を目指すクライマー達の物語で、嵐に襲われ、何人もの人が命を落とします。
何れの映画も実話を元に作られています。
幸いにも、「死」、「お葬式」というものには縁遠い私ですが、何れの作品も偶然でしょうか、「命」、「死」というものについて考えさせられました。
今から38年前、私の両親は、何も言わずに私の好きな道に進ませてくれました。
私立の歯科大学でしたので、親には大変な苦労をかけました。
私がいろんな学会の試験にチャレンジし、耐えがたい苦労にもめげずに歯科医を続けることが出来るのも、親の恩を粗末にしてはいけないと考えるからです。
現在、両親とも健在ですが、最近、急に年をとりました。
先日、伊勢に墓参りに行った際には、猛暑から父が具合が悪くなりました。
幸にも大事には至りませんでしたが、孝行は出来るうちにしたいと思います。
死んでから何回墓を参ったところで、墓は墓です。
みなさんも、親を大切に、お年寄りや子供を大切にしてください。
お盆が明けると、信州は一気に秋色になります。
風邪をひきやすい季節ですので、皆様、御自愛ください。
アテネから帰って休む暇も無く、7月17日は日帰りで大阪に行って参りました。
大阪大学吹田キャンパスで開催される第58回近畿東海矯正歯科学会例会に出席するためです。
物凄く広大な阪大吹田キャンパス
長野県の先生達は、現在は甲北信越矯正歯科学会に属しますが、私が大学を卒業し、矯正科に入局した当時は、甲北信越矯正歯科学会はまだ発足しておらず、近畿東海矯正歯科学会に属していました。
甲北信越矯正歯科学会が出来た時点で、近畿東海矯正歯科学会は辞めても良かったのですが、近畿東海矯正歯科学会は、大阪大学の力でしょうか、学会雑誌や例会の内容が結構アカデミックで勉強になるので、退会せずに会員資格を継続してきました。
今回わざわざ大阪大学まで出向いた理由は、日本矯正歯科学会ホームページ倫理規定についての講演を聴くためです。
同様の演題は、日臨矯会長の富永雪穂先生が、7月3日に甲北信越矯正歯科学会で講演されていますが、自分はESLOでアテネにおり、聞くことが出来ませんでしたので、大阪に出向いた次第です。
日矯学会倫理規定に関する講演の要旨、つまりホームページに記すべきではない語句や内容の要点を以下に箇条書きにします。
1, 「ブライダル矯正」、「スピード矯正」、「プチ矯正」などの学術的に不適切と思われる治療法や装置の名称
2, 「只今キャンペーン中につき、●%割引」
3, 「100%確実」、「絶対確実」
4, 「矯正専門医だから安心・安全」
5, 「他医院での装置は無料で取り外し致します」など、患者を勧誘するもの
6, 「都府県知事指定顎口腔機能診断施設」など、特別に指定を受けたものであると誤解を招くようなもの
7, 「○○矯正歯科研究所」とか、県名・地域名を含み、誤解を招くようなもの
8, 薬事未承認の薬物、材料、医療機器、治療法に関して、その名称、製造方法、効能・効果または性能に関しての広告を行っているもの(特にホワイトニングや、虫歯の予防薬剤、インプラントなど)
等々です。
こうゆう語句を使ってあるホームページの歯科医院は、歯科医師としての自覚に問題があると思います。(一般歯科で矯正も標榜している歯科医院に多く、矯正専門の医院ではあまり見られないそうです。)
このような歯科医院の治療レベルは推して知るべしでしょう。
患者さんの皆さんは、主治医を選ぶ際の参考になさって下さい。
歯科医師過剰で、経営の苦しい歯科医院が多いそうですが、医療は商売とは違います。
医療人として守るべきルールを守らず、医師としてのモラルが欠如している先生が非常に多いように感じます。
先日、ひろ矯正歯科に初診相談でいらっしゃった方は、子供が一般歯科でアゴを拡げる治療が必要だと言われたが、本当に必要でしょうか、と、セカンドオピニオンを求めて来られました。
患者さんは 6才の男の子で、お口の中は、まだ6才臼歯は1本も生えておらず、歯列も狭窄していません。
拡大の必要など全くありません。
成長発育の基本的な知識も持たず、この時期で拡大を勧めるなどとは、一体その歯科医師は何を考えているのかと、憤りさえ覚えました。
お母さんには、その年齢で拡大治療など不要であること、拡大が必要なのはどうゆう場合か、アゴの発達と成長のピークについて、拡大の危険性、今後はどうしたら良いか等々を御説明致しました。
私達医師・歯科医師は、患者さんの疾病を治療をして診療報酬を頂くのであり、お金欲しさに必要の無い治療・間違った治療を受けさせて患者さんを食い物にするなどとはとんでもないことで、こんなデタラメな歯医者は歯科医師免許を取り上げて欲しいと思います。
近東学会で講演を聴いた後は、うちの長男に連絡をとり、前から行きたかった Dancing Crabで食事をしました。
机の上に大きな紙を敷いて、その上に直接料理をぶちまけて食べます。
じつは、うちの長男、この春 大阪大学の歯学部に入学しましたので、大阪におります。
全国で50余名の狭き門、オヤジは馬鹿だが、子供はよく頑張ったと喜んでいましたが、入学して半年、大学生活も楽しいし、友達も一杯出来たけど、幼い頃からの夢である映画の道がどうしても諦められないから大学を休学したい、とのこと。
自分の人生、自分の好きなように生きれば良いよ、と話し、現在休学して映画に打ち込んでいます。
ただ、人生の先輩としてアドバイスをするならば、「学歴やライセンスは機会を逃したら取れない」、そして、「一度逃したチャンスは、二度とやって来ない」ということです。
日本一の阪大歯学部で勉強させて貰える人は、毎年日本中で50名程度しか居ないので、大切に!
ひろ矯正歯科の患者さんにも、受験を控えている方が多いです。
夏休みが終わって、追い込みですね。
目標を少し高く持って、頑張ってください。
裏側からの矯正歯科では世界で最も歴史と権威のある European Society of Lingual Orthodonticsの 第12回学術大会 が 6月30日から7月3日、アテネの メガロン・コンサートホールで開催され、学会から全てのセッションにおけるベスト・スピーカー賞を頂きました。
1年ほど前でしょうか、大会長のDr. Takis Kanarelisから学会への招待と講演の依頼、症例審査委員会の委員長である Dr. Germain Beckerからは、アクティブ・メンバーの症例診査を依頼されました。
ESLOは自分が最も大好きな学会なので、講演依頼は快諾しましたが、症例の診査・採点を行う事は辞退しました。自分は Non-Europeanなので、ヨーロッパの先生達からクレームが出るといけないと思ったからです。
しかしながら、学会は、Hiroは世界で初めて EBOを全部舌側矯正で合格した矯正専門医であり、会としては Only One Non-European Examinerとして Hiroが試験官をやってくれることを誇りに思うから、是非とも引き受けて欲しい、とのお言葉を頂きましたので、有り難く引き受けさせて頂きました。
ギリシャといえば、サントリー二島の青い海と白い建物、アテネといえば、アクロポリスです。
いつも仕事が忙しくて、リラックスすることが出来ないので、今回はサントリー二島にも行ってみたいなあ、アテネ市内もバッチリ観光するぞ! と、中央タクシーで松本を後にしました。
シャルル・ド・ゴールで ANAから Air Franceに乗り継ぎ、 6月30日の夜中零時半頃に学会場近くの ヒルトン・アテネに到着。
部屋からは、ライトアップされたアクロポリスが見えました。
疲れていましたが、プレゼンの準備が終わっていないので、寝ている場合ではありません。
パワーポイントに直しを入れ、講演時間をオーバーしないように発表練習し、また直しを入れ、、、気がつけばアクロポリスが朝日に照らされています。
朝食を食べながら今日は何処に行こうかな、と、ネットで観光を模索し、ついでに明日から始まる学術大会のプログラムをチェックすると、、、あっ! 今日は症例の採点をしなければならないじゃん!!
というわけで、観光はナシ、朝食を済ませてすぐに学会場に向かいます。
会場に着いて審査委員会のメンバーと採点方法の確認を行い、症例審査を開始します。
自分を含めて11名(イギリス、フランス、ルクセンブルク、ドイツ、ロシア)の先生達が所定の方法で Titular member, Active memberの症例審査を行います。
夕方には全ての審査が終了し、審査委員全員でミーティングを行い、解散。
ホテルに帰って、再度、パワーポイントに直しをいれます。
夜は20:00から恒例の Welcome Cocktail Partyです。
お迎えのバスで会場に向かいます。
会場では、2時間ほどの Greek dancingのあとでカクテルパーティーが始まりました。
ビールを飲みながらいろんな先生達と会話が弾みます。
翌日、7月1日は朝から学会場に行き、他の先生方の講演を聞き、Dental Technicians’ Meetingにも顔を出し、アッという間に1日が終わります。
その夜は、President’s Dinner Partyが シーサイドの レストランで開催されました。
1993年から毎年ミシュランを獲得しているレストランです。
自分の席はFernandoがキープしてくれたのですが、自分のテーブルは確保されているとのことでそちらに移動、ESLOの歴代会長達とお話をしながら楽しくディナーを頂きました。
ホテルに戻り、またパワーポイントに直しを入れます。
翌日、7月2日は 10:40から自分の講演です。
講演内容は、Japan Orthodontic Board、すなわち日本矯正歯科学会の認定医、指導医、専門医の制度と試験内容について、American Board(ABO)、European Board(EBO)と比較して紹介、合格症例をまじえてお話させて頂きました。
まず ABOについて。
ABO試験は、ケース・カテゴリーは指定されていませんが、難易度の指定があり、DIが20点以上の症例を3つ、10点以上の症例を3つ提出しなければならないということ、そして何よりも他の試験と違うところは、治療の終了した症例を持って行くのでは無くて、これから治療をする症例を持って行き、定められた期間内に試験に合格するレベルで治療を終了して提出しなければならないということです。
もちろん臨床試験を受けるには、事前に筆記試験、口頭試問にも合格しなければなりません。
自分も ABOを受けてみたいのですが、残念ながら ABOはアメリカ、カナダの歯科大学を卒業するなど、所定の要件を満たさなければ受験資格がありませんので、自分には受けることが出来ません。
EBOは、指定されたカテゴリーの 8症例を持参、もちろん口頭試問もあります。
EBOが他の試験と違うところは、生涯で 2回しか受験できない、つまり、1発目で合格しなければ、あと 1回しか受験する事が出来ないという事です。
幸にも自分は 1発で合格しましたので、プレッシャーはありませんでしたが、1回落とすと、チャンスはもう 1回しか無いわけで、それが恐くて 2度目の受験を躊躇する先生が多いと聞いています。
講演では、「もしも2回以内に受からなければ、死ぬまで受ける事はできません。」と言ったら、狙いどおり、会場内バカウケでした、、ヨカッタ!
そして、日本矯正歯科学会の専門医試験について。
日本矯正歯科学会は、認定医制度を1990年に、指導医を1997年に、そして、専門医を2006年に発足しております。
現在、日矯学会の会員数は約6600名、この中には、小児歯科、一般歯科の会員が相当数います。
そして認定医が3029名、この中にも、小児歯科、一般歯科の会員が相当数います。
そして専門医は309名、会員全体の4.8%にしかすぎません。
私個人の意見としては、「日本矯正歯科学会専門医」はその名のとおり、「矯正歯科専門医」であるべきだと思いますが、実際には、小児歯科診療を日々行っていることが明らかな矯正歯科専門医で無い先生も含まれている事が確認されています。
日矯専門医試験は、10種類のカテゴリーが指定され、治療結果だけで無く、写真や模型の質、レポートの詳細さなども採点対象なります。
発足当初、私が受験した頃は、一度に10症例を持って行き、合格しなければなりませんでしたが、最近では、いくつかの症例を自分で選んで提出し、所定の年度内に10種類のカテゴリーを合格すれば良いという「積み上げ方式」となっており、ハードルが大幅に低くなりました。
日矯専門医の試験は、匿名で行われており、試験官が誰か、受験者が誰かということは完全に秘匿化され、受験者は症例展示室の入り口で受付番号とはまた異なった番号札を渡され、その番号のところに症例を展示します。
所定の時間内に展示を終え、部屋を退室、そのフロアから誰も居なくなった後、試験官がやって来て、採点を開始します。
ハードルが低くなったとはいえ、過去には某歯科大学の教授が2度も試験に落っこちていますので、日矯専門医試験がいかに公正かつ公平に行われているかということがおわかり頂けると思います。
興味深いのは、日矯専門医の数が、2009年には 323名居たのが、2016年では 309名に、24名減少しているということで、普通は会員数を増やしたいので、経年的に増加して行く傾向があると思いますが、日矯専門医に関しては、減っているということです。
これはそれだけ試験がきびしいということか、志願者のレベルが低下しているのか、あるいはお亡くなりになったか、更新試験に合格できなかったか、といったところでしょうか、、。
与えられた講演時間を超過すること無く、講演を終えました。
以前にひろ矯正歯科に見学に来た親友の Fernandも講演を行いました。
その日のプログラムが全て終わったあと、DUOL reunionに呼ばれていましたので出席しました。
パネルには、パリ大学での写真がたくさん貼ってあり、自分が診療している写真や、パリ大学の先生達と一緒に過ごしている写真がたくさんありました。
みんな一言づつコメント述べましたが、自分は Alainが健在であった頃の思い出が次々と思い出され、こみ上げてきて、何も話をする事が出来ませんでした。
Alainの真似をして、隣の人達を倒してやりました(^^;)
その夜は埠頭の素晴らしい会場で Gala Dinnerが行われました。
最初は端っこのテーブルに座っていたのですが、Hiroの席はこっちに用意してあるから移動してくれと呼ばれて、ステージ前の席に移動します。
Galaではいつも Active member, Titular member試験の合格者の発表と、学術大会の表彰が行われます。
以前にひろ矯正歯科に見学に来た Dr.Svetlana Koval, Dr. David Manzanera が Active member試験に合格されたのは、我が事のように嬉しかったです。
Michelと話をしながら食事をしていると、全てのセッションでのベスト・スピーカー賞に “Toshiaki Hiro”と呼ばれ、慌ててジャケットを羽織ってステージに登ります。
Best speakerや Best panelistは、会場で聴講している先生方の投票によって決まります。
仲が良いから授与するなどのインチキは一切ありません。
ところが、私の受賞に嫉妬して腹を立てた日本人の先生が、あろうことか学会の重役に暴力を振るい、殴られた先生はメガネが吹っ飛ぶという、信じられない事件がありました。
私が試験官を務めたことも、ベストスピーカーを受賞したことも、ヨーロッパの先生達は歓迎し祝福してくれましたが、日本人の先生達は妬み、嫉妬していたようで、なんとも恥ずかしい、心貧しい人達だなあと思いました。
翌日4日は学会最終日です。昼過ぎに全てのセッションが終了し、以前 ひろ矯正歯科に見学に来たDr. Chintan Valiaが Acropolisに行こうと誘ってくれましたので、一緒に見学しました。
彼は携帯一つで何でもこなし、1ヶ月間 松本に居たときには自分よりも松本のことをよく知っていたのには驚かされましたが、この日も、正規料金の半額以下の格安タクシーを呼び、晩御飯も美味しいステーキレストランに案内してくれました。
翌日は帰路に着きます。
休む暇も無く、帰国した翌日から患者さんがぎっしりです。
いろんな先生が学会前後にギリシャ観光、やヨーロッパ観光をしているのに、自分は今回も殆ど学会のみ、、まあ仕方が無いです。
次回のESLOは、2年後にリスボンで開催されます。