昨年、インドの舌側矯正歯科学会(ILOC)に招待され、特別講演を行いました。
帰って来て間もない9月、インドの矯正専門医であり、Baroda大学の講師である Chintan Valia博士からメールを頂き、先日のILOCで私の講演を聞いて非常に感動した、日本に行くから私の診療を見学させて欲しい、舌側矯正を勉強させて欲しいとのこと。
いつ、どれくらい来たいのかと聞けば、受け入れてくれるならいつでも良い、1ヶ月ほど滞在したいとのこと。
自分が学会などで出掛ける時期をなるべく避け、6月頃はどうかと返答すると、6月7日から7月12日までの予定で来日したいとのこと。
1ヶ月の滞在となるとホテル代もかなりの費用になるので、私が直接松本駅近くのホテルに交渉して1ヶ月間の連泊を破格値で確保しましたが、後に自分で東急を手配したとメールがあり、私が押さえたホテルはキャンセル、成田空港からの中央タクシー空港便を手配してあげました。
6月9日の火曜日の朝、いつもどおり仕事をしていると、9時過ぎに彼はJRでひろ矯正歯科にやって来ました。
松本—広丘間のJRの1ヶ月定期を買ったそうです。
私には、Indian=so smartというイメージが強いです。
それが正しいかどうかはわかりませんが、滞在中彼と話していても、日本の地理や歴史などをすごくよく知っている。
幾度となく晩御飯を一緒に食べに行きましたが、私が37年間住んでいても知らないレストランとか、山の名前等々、何でも知っているのには本当に驚きました。
毎朝、定刻に診療室に現れると、一番最初に私の所に “Good morning, Sir”と挨拶に来てくれ、とても礼儀正しい上に、やって良いことといけないことをキチンとわきまえている。
私は外国からの見学者は受け入れていますが、日本人はお断りしています。
その理由は、日本人は何の許可も無く勝手にいろんな事をし、いろんな物を勝手に持って行く。
診療見学に100万円ほど請求するペリオの先生もいますが、私は1円たりとも貰っていませんので、2~3000円の手土産を持ってきて、私が永年かけて作り上げた知的財産を当たり前のように持って帰る、ちょっと注意すると逆ギレする、こうゆうのは、私の常識からすると信じられないことで、歯科医師である以前に人間的にどうなの、って思います。
彼は優秀かつ礼節もわきまえており、1ヶ月間気持ち良く過ごす事が出来ました。
滞在中は、舌側矯正特有の診断、歯の動きが外側の矯正と舌側矯正ではどのように異なるのか、矯正力をかけたときの歯の反応の違いから、治療に必要な最低限のワイヤーベンディング、そしてラボではヒロシステムのラボを最初から完成まで実際に作って貰い、インドにIBSの技術を持ち帰って頂きました。
ちなみに、2014年時点でのインドの人口は、12億6740万人、彼の開業する町、Baroda の Nizampuraの人口は450万人で、毎年200人の歯科医師が誕生するとのことです。
インドの教育システムはといえば、小学校は2年間、中学校が5年間、高校が5年間、歯科大学は5年間で、矯正医になるにはさらに3年間の研修が必要とのことでした。
診療中、私が finishing & detailingで wireをadjustしているのを見て、何故 wireを bendingするのか、との質問。
Chintanはしないのか、と聞くと、しないと言う。
何故しないのかと聞くと、Bracketが SWAだからだ、wireを曲げて調整するのでは無く、bracketを付け直すことで仕上げて行くのだ、大学でもそうやって教わったし、wire bendingのトレーニングは一切受けていないとのこと。
以前、東京医科歯科大から来た教授も同じ事を言っていましたが、SWAだから wire bendingをしないというのは大きな間違いで、wire bendingの代わりを全て bracketの repositioningで済ませる事は出来ません。
例えば、抜歯症例での gable bendや、リンガルの治療に於ける anti-bowingなどの例を挙げて、wire bendingでしか出来ない事がたくさんあるということを説明し、USCのシラバスの wire bendingの chapterをコピーしてあげ、基本的な wire bendingも教えました。
インドには wire bendingを習得する基本的な矯正学のコースは無いとのことでしたので、毎年 Tucsonで行われている Tweed courseを受けるように勧めました。
1ヶ月はアッという間に終わり、インドに戻った彼からはキチンと御礼のメールを頂きました。
診療中の写真は1枚も撮っていないので、食事に行ったときの写真と、医療タイムスに掲載された記事を紹介します。
松本市内のイタリアン、トラットリア松本画廊にて。
安くて美味しいです。
来来亭塩尻店にて。
旨辛麺の4辛が彼には辛くないそうです。
僕は1辛でも辛くて、汗だくになりますが、、。。
来来亭は本当に美味しいですね。
みなさんも行ってみてください。
最後の夜は、松本のカレー屋さん、メーヤウにて。
メーヤウでは、本場のカレーが何種類も、食べ放題です。
歯科衛生士の大門さんの結婚式の模様をスタッフブログでお知らせしましたが、大門さんは2014年3月、妊娠8ヶ月まで現役で活躍してくれ、産休に入られています。
大門さんからは、5月に無事、元気な赤ちゃんを出産されたという報告を受けていましたが、実際に顔を見るまではやはり心配です、、。
7月28日の火曜日、晴天。
いつもどおり仕事をしていると、大門さんが赤ちゃんを連れて ひろ矯正歯科に顔を出してくれました!!
大門さんと赤ちゃんを見つけるやいなや、スタッフ全員集まってきて「きゃ〜! かわいい〜〜!!」と、大騒ぎです。
歯科開業医では、「結婚」=「退職」であったり、「出産」=「退職」であったりすることが多いですが、ひろ矯正歯科では、勤務の継続を希望されて、産休・出産というのはOKです。
大門さんで2人目です。
医科の看護士さんは、結婚しても、出産しても、仕事を続けられる方が多いのに対し、歯科衛生士は結婚と共に退職、二度と職場復帰をしない人が多いですが、折角身につけた知識・技術・経験を埋もらせてしまっては勿体ないですよね。
結婚しても、子供が出来ても、ひろ矯正歯科での仕事をライフワークとして続けて頂く事が出来れば、院長として嬉しい限りです。
そのためには、ストレスの少ない労働環境、充実した福利厚生が大切であると思います。
ひろ矯正歯科に通院されている全ての患者さんのために、そして、患者さんのために精一杯頑張ってくれているスタッフのために、院長として出来る限り頑張ります。
大門さ〜ん、カムバックをみんな楽しみに待っていますよ〜〜!!
かわいい〜〜〜! 抱っこさせて貰いました。 笑ってくれました〜〜!
6月21日に、一ツ橋の学術総合センターにて、第23回日本成人矯正歯科学会大会が、7月4,5日に名古屋国際会議場で第28回日本顎関節学会総会/学術大会が開催されましたので、参加してきました。
日本成人矯正歯科学会とは、その名のとおり成人の矯正治療に関する学会で、学術大会は結構アカデミックで、ためになる講演が多いですので、未入会の先生は是非入会されることをお勧めします。
私が本会に入会したのは、20年ほど前だと思いますが、毎年、海外の学会や日矯関連学会と重なってしまって、あまり参加できていません。
前回参加したのは、スタッフを連れて行った2011でしょうか、、。
本会からは以前より理事を拝命されておりますが、この度、甲北信越地区の地区役員も依頼されましたので、なんとか時間調整し、行って来ました。
大会では、一般講演4題、依頼講演7題、特別講演1題、RTD 6題、学術展示8題が発表され、たいへんな盛況でした。
なかでもティースアートの椿知之先生の「矯正歯科におけるホワイトニングの留意点」という講演は、自分のホワイトニングについての知識をアップデート出来ました。
ひろ矯正歯科では、ホームページの「しません」に詠ってあるように、現在はホワイトニングを行っていません。
その理由として、
1、一度ホワイトニングをすると、2〜3ヶ月に一度、ホワイトニングを繰り返さないといけなくなる
2、虫歯の治療をしてある患者さんが多く、ホワイトニングで天然歯の部分は白くなっても、レジン充填は白くならないために、ホワイトニングする前の歯冠色に合わせて充填されたレ充の色が合わなくなり、白い色で再充填が必要になる
3、しかしながら、患者さんがホワイトニングをやめると、今度は歯の色は白さを失うが、白い色で充填し直したレジン充填は色が変わらないので、そこだけ白くなってしまう
4、薬剤刺激によって、知覚過敏を起こすことがある
5、個人的な考えとして、日本人は黄色人種で有り、肌の色も歯の色も白人とは違って黄味がかっているのが本来の色で、歯だけ不自然に白いのは「変」、、(芸能人に何人かいます)。 なので、ひろ矯正歯科では今まで汚れ落としは無料で行ってきましたが、ホワイトニングはしてきませんでした。
6、ホワイトニングをするのに特に技術の習得などは不要で、歯科医師であれば誰でも出来る事なので、自分はもっと専門性の高いことに時間を使いたい、ホワイトニングはやりたい先生がやれば良いかな、という考えが私にありました。
ところが、先日、有名なモデルの方と話す機会があり、その人は矯正治療をされてきれいな歯並びでしたが、色が不自然に白く、「ああ、この人も不自然に白い歯、、」と最初は感じました。
ところが暫く話しているうちに、もしもこの人の歯がホワイトニングされたこの白さでは無くて、日本人の本来の歯の色だったら、写真の写り映えは落ち、モデル業に影響するだろうなあと思いました。
それ以来、「人によっては」不自然なくらい白いのもアリかな、と考えるようになりました。
椿先生が講演で紹介されていたように、日本国内未承認の薬剤には優れたものもいくつかあり、これらの国内認可が取れ、ひろ矯正歯科でレジン充填等への対応も出来る環境が整えば、ひろ矯正歯科でもホワイトニングをやろうかな、と考えています。
以前から、ホワイトニングについて患者さんからはよく聞かれますが、今現時点では、やる方向で考えてはいますが、いつからやるかは未定です。
7月4,5日は、名古屋国際会議場で第28回日本顎関節学会総会/学術大会が開催されました。
自分は、7月4日の土曜日は一日診療でしたので、日曜日の朝、始発の特急しなので名古屋に向かい、5日の学術大会のみ参加してきました。
シンポジウム6題、特別講演2題、教育セミナー6題、教育講演1題、学術奨励賞受賞講演1題、オーラル3題、学術展示146題のほか、イブニングセミナー、ランチョンセミナー、ランチタイムセミナー、ハンズオンセミナーなどが行われ、会場はたいへんな賑わいでした。
ひろ矯正歯科は矯正専門の医院で、一般歯科治療や顎関節症の治療は行いませんが、一般歯科治療の知識や、顎関節疾患の診断・治療に関する基本的な知識は必要ですので、日々文献を渉猟し、学会にも参加して知識のアップデートをおこなっております。
本学会では関節症の診断や治療法に関する講演を聞くことが出来ました。
特に DC/TMD (Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders) Diagnostic Decision Treeは自分の臨床にも関わることですので、整備中とはいえ、参考になりました。
DC/TMDとは、1992年にDworkin らが中心となって作成された RDC/TMD(Research Diagnostic Criteria /TMD)を IADRの International RDC/TMD Consortium Network と IASPの口腔顔面痛グループが中心となって修正を重ねたもので、日本顎関節学会では、「学会症型分類とRDC/TMD分類の検証委員会」が2012年に組織され、顎関節症診断基準に種々の改訂がなされてきましたが、従来の症型分類からDC/TMDと整合性を持たせた改訂分類への移行はまだ徹底しておらず、日本顎関節学会としては「これまでとは何がどう変わったのか」を各都道府県の歯科医師会と協力して説明会を開催する予定、とのことです(抄録より引用)。
学会では、International RDC/TMD Consortium Network memberである 九大の築山能大先生、北大の有馬太郎先生がDC/TMDの診断基準と診査法について講演をされていらっしゃいました。
内容がかなり難しいので、一般の方は何の事だか全くわからないと思いますが、うちのHPを見られる歯科医の先生方のために記しておきます。
患者さんのみなさんは、顎関節治療に関しては、次の事に注意してください。
1, 顎関節の治療には、専門機関でのトレーニング、専門の知識と検査が必要であるということ
2, 一般歯科開業医で治療できるものではないということ
3, 一般歯科で検査もしないで咬合調整と称して歯を削るのは絶対に行ってはならないこと
4, 顎関節治療は、基本的に健康保険適用であるので、いろいろ理由を付けて保険外の治療をすすめるような医院は避けた方が良いということ
5, 矯正をすると顎関節症が治る、とか、顎関節症を治すために矯正治療をしましょう、などと言う歯科医がいますが、歯並びが原因で顎関節症を起こしているのであれば、矯正をすれば治ることもありますが、基本的に顎関節症は複数の原因が重なって発症していることが多いので(マルチファクター)、私自身のコメントとしては、矯正をして顎関節が楽になったという患者さんを私もたくさん持っていますが、それは結果的にそうなったのであり、私は顎関節の治療をするために矯正治療をしたのではない、私には顎関節の治療は出来ません、ということ
6, 顎関節の治療を整体師が行っていることが多く、よくテレビで「背骨が曲がっている、骨盤が歪んでいる」、と言い、足を引っぱって、割り箸を噛ませて、ほら治った、という整体師がいますが、あれは滅茶苦茶な嘘八百であるということ。なかには、「頭の骨は何十個のパーツから出来ている、そのパーツをバラバラにして頭蓋骨を組み直すことで小顔になる」、などといい、数百万円の施術量を取る詐欺同然の整体師がいるということ
などなどです。
顎関節学会終了後、新幹線で大阪に向かい、翌日技工士の川端下君と落ち合い、大阪市内の技工所を見学してきました。
この記事を書き終えたら、明日は診療後、新潟に向かいます。
甲北信越矯正歯科学会に出席してきます。
本当に忙しいです。