2013年2月7日、私の最も尊敬する、最も大切な親友である、パリ大学矯正歯科の教授であるDr.Alain Deckerが永眠しました。
あまりのショックと悲しみに、何も言葉が出ません。
診療中は、患者さんの治療に集中していますが、診療が終わって帰宅すると、悲しくてしょうがないです。
ひろ矯正歯科の院長日誌に書くべきネタでは無いようにも思いますが、人が死ぬということは、どうゆう事か、生きるということはどうゆう事か、今一度、皆さんも考えて頂きたく、書くことにしました。
Alainは、2011年、大阪でのWSLOの際に、彼を含めた十数名が私の医院に見学に来る予定でした。
松本城観光に始まり、典型的な日本料理での晩御飯を用意していたのですが、3月11日の福島原発事故でフランス政府は日本への渡航禁止令を出したために、残念ながら来日中止となってしまいました。
昨年、パリで一緒に食事をしている時に、「日本に遊びにおいでよ」と誘ったら、「もう少しでパリ大学をリタイアする、そしたらイギリスに引っ越すんだ、だから今、イギリスに家を作っているんだ、そっちが忙しいから無理だ」と言いました。
もしかしたら、その時、彼はすでに彼自身の余命について悟っていたのかも知れません。
パリでの夜は、私が牡蠣が好きなので、高級なレストランを予約してくれ、私が生牡蠣を片っ端から平らげるのを見て、何回も何回もおかわりを注文してくれました。
超一流レストランでのワインと生牡蠣、途方も無く高額なディナーだったと思います。
今年の春は私が彼を招待して、彼の好きな物を腹一杯喰わせてやろうと思っていたのに、、、叶わぬ夢となってしまいました。
最近、悲しい事件が多すぎます。
東北の震災で命を奪われた人達。
笹子トンネルの管理不行き届きから命を奪われてしまった人達。
コネチカットで銃乱射、命を奪われた人達。
LAで冤罪を主張し、警官を逆恨みしての警官殺人。
Guamでの無差別殺人。
今朝、朝御飯を一緒に食べ、行ってらっしゃい、と、手を振って送り出した家族が、帰らぬ人となる。
ついさっきまで、そこで一緒に御飯を食べ、一緒に酒を飲んでいた人が、酒を買いに行ったまま帰らぬ人となってしまう。
人の命なんて、なんとはかない、なんとあっけないものでしょうか。
でも、人間である以上、いつか死ぬ。
必ず死ぬ。
死なない人なんていません。
いつ死ぬかわからないから、出来るだけ手を抜き、出来るだけ楽をするんだ、自分中心に生きるんだという人もいます。
でも私は、いつ死ぬかわからないからこそ、常に自分に出来る限りのことを精一杯頑張って生きなければならない、自分は最後にして、人のために生きなければならない、と考えます。
そして、自分一人で生きているわけではない、自分一人の力で今の自分があるのではないということを常に肝に銘じ、恩を受けた人に恩を仇で返すことが無いように生きて行きたい。
人間は、いろんな人の恩を受けて生きています。
親、恩師、友人、家族、、。
私の親は現在、82才と80才で、幸いにも両親とも健在です。
いつまでも元気でいて貰いたいと、毎朝手を合わせますが、いつ、何処で、どうなるかわからない。
私の親は、とんでもない苦労をして私を歯医者にしてくれました。
歯医者には、親が医者や歯医者で、何の苦労も無しに歯医者になった、開業する時には、土地付き、医院付き、患者付き、スタッフ付き、借金無し、という先生が多いです。
それを妬む気持ちは全くありません。
事実として言えるのは、私の親は、喰う物も喰わないで私を歯科大に入れてくれたということで、これがどんなに大変な事か学生時代は全くわかりませんでしたが、卒業して自分で働くようになって、やっとわかりました。
今、私は矯正歯科医として成功していますが、今の私でさえ、子供が私立の歯学部や医学部に入りたいと言ったら、「頑張って国立に入って頂戴」、と言わざるを得ません。
だから私は、恩を全うするために出来る事は、私自身が最高の歯医者になること、それ以上の恩返しはないだろうということです。
金目当てで歯医者をしている、金目当てで矯正歯科医をやっている先生もいます。
私はお金なんかどうでもいいです。
正直、お金は欲しいですが、それよりももっと大事なことは、最高の治療をすること、最高の矯正医になることだと考えます。
恩師への恩返しについても同様に考えます。
自分の食べる分を取り分けておいて、子供には与えない親がいます。
自分は飢えていても、自分は我慢して、子供に食させる親もいます。
人生の価値観、家族や回りの人への価値観は人それぞれでしょうが、私は最低限、御世話になった人が死んだあとで、「ああしておけば良かった」、「あんなこと言うんじゃなかった」と後悔したくない。
そう考えて、精一杯、毎日生きています。
患者さんの治療にも、スタッフに対しても、家族に対しても。
患者さんや、スタッフや、家族の期待を裏切らないように。
Alainとの思い出を slide showにまとめました。
興味ある方は御覧下さい。
毎日、早朝から夜中まで、診療・学会準備・雑用に追われ、暫く院長日誌をアップしていませんでした。
いつも楽しみに読んでいてくださる皆様、新年の挨拶もなく、申し訳ありません。
たまったお話しを一気にアップさせて頂きます。
青沼さん御結婚〜♥
受付の青沼さんが2011年12月に結婚退職され、翌年2012年12月8日に披露宴が行われました。
青沼さんは、入社当時からとっても几帳面で、全てがキチ〜ッとしていて、朝も勤務開始時間1時間前から出勤し、患者さんが快適に治療を受けられるようにいろんな準備をしてくれていました。
ひろ矯正歯科には無くてはならない存在でしたが、お目出度いことですので、しょうがないですね、、バンザ〜イ!!
旦那さんは、美容師さんで、現在、松本市両島でHBKという美容院を夫婦2人でやっておられます。
すっごくセンスのいい美容師さんですので、皆さんも一度行ってみてください。(要予約)
それにしても、青沼さん、綺麗だったな〜〜!!
末永くお幸せに!
国道19号4車線化
ひろ矯正歯科の面する国道19号の4車線化拡幅工事が10月に完了しました。
完成まで本当に長い道のりで、大変でした。
1997年3月、ひろ矯正歯科が現在の地に移転した時は、広丘駅も西を向いており、東の丘中方面に延びる道路も出来ておらず、畑の真ん中でしたが、19号の拡幅はすでに都市計画化されていましたので、拡幅ラインを避けて建築しました。
移転当時、国道の拡幅は何十年も先と言われていましたが、用地交渉が始まったら、誰よりも先に土地を提供し、地域の発展に貢献しようと決めていました。
ところが、実際に用地交渉が始まってみると、国交省は代替地確保・補償に全くの非協力で、国道完成後は駐車場がなくなってしまう、それによって患者さんが通院できなくなっても一切関知しないという事でした。
患者さんに迷惑がかかることだけは避けなければならないと、周辺の土地の地主さんに片っ端から頭を下げましたが、代替の駐車場は見つからず、少しづつ周辺の買収が進む中、ひろ矯正歯科だけが成田空港反対派地権者のようにポツンと残されました。
連日連夜、インターネットには、「ひろ矯正歯科は金目当てで土地を提供しない」、「ひろ矯正歯科は塩尻から出て行け」等々の誹謗中傷が書き込まれ、この仕事を続けることさえ嫌になりましたが、そんな折、お二人の Gentlemenがいろんな事情を御理解くださり、捨て身でご尽力をくださったおかげで、それまでの悪夢の7年間が嘘のように話が急展開、代替えの駐車場も無事確保することが出来ました。ご心配をおかけした患者さんの皆様にご報告申し上げますとともに、お二人の Gentlemenには心より御礼申し上げます。
52回目の、、
私、院長廣俊明の52回目の誕生日に際し、今年もスタッフのみんながお祝いをしてくれました。
誕生日当日、診療が終わって、終礼のために2階に上がってきた私を待っていたのは、炸裂するクラッカーと、真っ暗な部屋の中に浮かび上がるバースデーケーキでした。
見ると、ケーキにも僕の似顔絵が描いてあり、おまけにいろんな写真を寄せ集めた色紙まで、、。
本当に嬉しいです。
みんな、ありがとう!
月曜会にて
「月曜会」という、お医者さんのスタディーグループがあります。
その月曜会で矯正歯科の話をさせて頂く機会を与えて頂きましたので、行って参りました。
お医者さんは、歯科とは全く分野が異なりますので、歯の構造から、矯正歯科で歯が動くメカニズム、通常の矯正治療例、そして私の得意とする舌側矯正の治療例をいくつか紹介しながら、歯並びが悪いとどうゆう悪影響があるのか、なぜ矯正治療をした方が良いのか、等々について、お話しをさせて頂きました。
外科医、内科医、耳鼻科医、産婦人科医、泌尿器科医等々、そうそうたる面々で、少し緊張しましたが、矯正治療前後の比較を見ては、「おお〜っ!」と声が上がり、重度の歯周病の症例を見ては「おお〜っ!」と声が上がり、とても喜んで頂けたようでした。
こんな会に僕も入れて頂くことが出来れば嬉しいのですが、御迷惑だろうな、、。
昨年の7月25日、会長の Dr.Thomas Drechslerから直々のメールで、2012年6月28日〜7月1日、フランクフルトでヨーロッパ舌側矯正学会大会が開催されるから、Pre-congress courseをやってくれないかというオファーを頂きました。
ESLOは自分の好きな学会なので、いつもどおり、2つ返事でOKと返事をしたものの、大変でした、、準備が。
知らされてから、約1年間準備期間があったわけですが、いつもどおり朝から晩まで毎日診療に追われ、他にも日本矯正歯科学会やら、日本臨床矯正歯科医会での展示発表やら、アメリカの矯正歯科学会の準備やら、3月の Toulouseでの Instructorやら、その他諸々ここには書けないような extra workに毎日追われていましたので、準備する時間がない。
その上、20分、30分の依頼講演ならサラっと片付くのですが、朝から晩まで1日の講演となると、その準備たるや、ほんとうに大変です。
いつものごとく、毎朝5時に起きて仕事を始める生活が数ヶ月、行きの機内でも 寝ないでずっと仕事、プレゼンが完全に完成したのは、フランクフルトのホテルで学会前日の夜ですから、もう大変です。
機内では隣に座っていた社長さんぽいお方から、「歯医者さんですか? 一睡もしないでお仕事されていて、本当に大変ですね。」とお声がけを頂きましたが、本当に大変なんです!
しかも、これだけ大変な思いをしても、報酬は無し、医院を閉めて行きますので、赤字だらけです。
なので、その分正当に評価をして貰って初めて、やった甲斐が出るというものですが、、。
6月27-28日
いつもどおり、何かあってはいけないので、1日早く Frankfortに入りました。
ホテルに着いたのが17時頃、まずは会場を確認に行きます。
これが会場の筈ですが、Flagも Billboardも何もない、、どうなっているんだ??
不安になって会場の写真を Facebookにアップしてみると、すぐに Germainと Thomasから、ここで良いんだとの書き込みがあり、一安心。
会場は確認したので、ホテルに帰って晩御飯。 ソーセージとビールだけで お腹いっぱい、、。
そのあとも、仕事を続けます。
翌28日は朝3時に起きて、準備・準備・準備。
お昼御飯も食べないで、1日中、準備・準備・準備!
19時半に Thomasが迎えに来るという約束でしたので、ホテルのロビーで待ちますが、1時間経っても来ない!
いい加減頭に来て、部屋に帰って仕事の続きを始めると、Facebookに会場前のレストランで待っているという書き込みが!
なんてこった、そりゃないでしょう、、!
気が向きませんが、しょうがなく レストランまで出向きます。
むくれていてもしょうが無いので、楽しく食事を。
晩飯を食べたあとはホテルに帰り、最終チェック、、OK!!
6月29日
1時間前に会場に到着、プレゼンの準備をします。
最近の学会では、Power pointのデーターを学会側がコピーして、演者はボタンを押すだけなのですが、今回 1日のプレゼンは、じつにスライド枚数1092枚! 動画12本! サウンド15本! 総計3.21GB!
しかも、iTunesに入っているサウンドの再生がうまくいかない事がわかっていましたので、自分の PCでプレゼンをしたいと主張、現地のスタッフの方が特別にファイバーケーブルを張ってくれて、開始時間に遅れることなく、無事講演を開始しました。
ここのスタッフの技術は素晴らしく、過去15年間を振り返っても最高のサポートをしてくれました。
本当に素晴らしかった、、。
私の講演内容の本題は、矯正歯科医に対する警告。
すなわち、世の中、何でも自動化されてきており、矯正歯科学の分野に於いても然りで、レントゲン分析、模型分析だけで無く、診断・治療方針の立案もパソコンが行う。
ブラケットの調製もパソコンが行い、ワイヤーベンディングもベンディングマシンが行う。
矯正医がするのは、パソコンが下した診断した内容に従って治療を進め、パソコンが作った装置を装着し、マシンが曲げたワイヤーをセットするだけ。
どんどん頭を使わなくなって、どんどん馬鹿になってゆく。
時間があれば、やることは携帯ゲームだけ。
私自身、オートマ車に乗りますし、自動化が必ずしもいけないとは言いませんが、医療ってのはそんなもんじゃない、日々勉強と努力の積み重ねだと思うのです。
こういったツールやソフトウエアは、あくまでも補助であり、診断は矯正医自らの知識と経験をもとに、自らが行う。
患者の来院毎の調整に際しても、現状を瞬時に把握し、必要な処置を的確に判断し、最適なワイヤーを選択し、その状況に応じた最高の処置をする。
全て他人任せに治療を進め、計画どおりに治療が進まなくなった場合、誰が問題解決するのか?
パソコンか?
矯正装置か?
Wire bending machineか?
違います。
私たち自身で対応するしかないのです。
つまり、患者さんの治療をするのは、パソコンでもなければ、矯正装置でもなくて、私たち矯正歯科医なのです。
「○○社のPre fabricated wireが一番イイ」、こんな馬鹿なことを言っていてはいけないのです。
この事を一人でも多くの方に再認識して頂きたく、USC Dr. Harry L. Doughertyの 3H, すなわち、“Heart, Head, Hand”や、Dr. Thomas F. Mulliganの名台詞、“Who does your thinking? You or your appliance?” というフレーズを引用し、私たちは常に Thinking Orthodontistでなければならないということを強調しました。
そして、そのためには何をしなければならないのか、舌側矯正に於いては、セットアップの重要性、ブラケットポジショニングの重要性、ワイヤーのベンディング方法等々について、動画を多用して説明、さらに JOBや EBOの症例、オクルソグラムの応用や、右脳活性エクセサイスについても紹介しました。
よく、「あの先生は器用だ、羨ましい」と言う人がいますが、器用だということは、どこをどうしたらよいか、頭で理解しているから手が動くわけで、何もわかっていないのに、手だけが勝手に動くことなどあり得ないのです!
熱心に wire bendingする先生達。
世界各国から御参加頂き有り難うございました。
講演は 9:00から 16:00までの予定でしたが、終わってからも質問がいっぱいで、結局、会場を後にしたのは 17:00頃でした。
その夜は、学会場隣接の Hotel Jumeirahの4階パティオで Welcome party。
空腹にシャンパンが効きました。
6月30日〜7月1日
翌日から ESLOの通常プログラムが始まりましたが、、、私の Abstractを読んだのでしょう、私が昨日講演した “考える大切さ” を真似して講演、さらには、ラボの手技も Hiro systemと少し材料を変えただけで殆どコピーという講演を聞いた時には、正直、驚きました。
さらに、私が Cannesで世界第一号の World Board of Lingual Orthodonticsを受賞して以来、にわかに有名になった接着方法の講演に際しては、挙手質問すべく準備をしていましたが、残念ながら演者の先生は、肝腎の部分には触れずに講演終了、質問の機を逸しました。
私の言いたいのは、最初から精度が出ないことは明らかなのに、有名希望で紹介して広め、精度が出ないと苦情が来れば、今度はベースを延ばして切縁・隅角にコア引っかけを作り、接着後はその部分をバーでカットする。
これは、私が15年前にやっていたことと同じ、材料と色と形を変えただけで、一体何をやっているのか、ということです。
本当に優れたものなら、私は即刻、Hiro systemはやめてその方法に変えますが、実のところ、とても比較できるレベルではありません。
何を使おうが、どんな方法で治療しようが、それはその先生の自由であり、その先生の選択ですから、Hiro systemを使えなどとは言いませんが、私たち医療人たる者、過去のリサーチをしっかりとして仕事をする、さらに、良いものと良くないものを見分ける選球眼を持つということ、これはとても大切なことです。
Active memberの Case presetationでは、Dr.Fernando de la Igresiaが最高得点を獲得しました。
彼の症例はいずれもHiro systemと Hiro bracketsを使って治療されたものです。
Gala dinnerにて。
いつもは Gala dinnerは格式高いフルコースですが、今回はビュッフェスタイルでした。
僕は、並ぶのが大嫌いなので、殆ど食べませんでした。
今年の3つの大きな仕事は、この学会をもって終わり、少し気が楽になりましたが、明日からも遊んでいる暇はありません。
年内のアレと、来年のアレとアレ、準備をしなければ、、。
アレの内容については、また院長日誌で報告しますので、お楽しみに。