2023年 12月 17日、LTSOAが東京 ヴェルサール神田で開催されました。
矯正歯科という学問は 200年以上の歴史があり、治療後の安定について いろいろな先生、研究者が研究していますが、これをやったらマズい、ということはわかっていても、こうすれば安定する、ということはわかっていません。
矯正治療で歯並びを治せば、ずっと綺麗な歯並びでいられると思っている患者さんがいますが、歯並びは矯正してもしなくても加齢と共にだんだん悪くなるのが普通であり、矯正治療後の歯並びを何もしないでそのまま維持してゆくことは不可能で、きれいな歯並びを維持してゆくには「保定」が必要です。
保定に関しては、通常 2年間の保定期間で終了して、さようなら、また凸凹になったら来て下さい、と言って、再治療を希望する患者さんには再chargeという先生が多いのが実情です。
矯正治療後には保定は絶対必要であるのに、矯正専門医の中には、保定料金を治療代とは別に chargeするという、ちょっと常識外れというか、悪徳っぽいというか、信じられないことを平気でやっている先生もいます。
ひろ矯正歯科では、保定には異物感・発音障害の大きい可撤式の保定装置は使わず、異物感の殆ど無いリテーナーで、最低限 3年間の保定を行っています。
その間は半年に 1回チェックに来て頂き、3年経ったところで外すかこのまま保定を続けるか、外したらどうなるかの説明を行い、外すか外さないかの判断を患者さん御自身にして頂いています。
保定延長を希望される患者さんには、追加料金等は一切無しで、患者さんが希望する限り保定を続けていますが、殆どの患者さんが長期保定を希望されており、20年以上保定のワイヤーが入っている方が多いです。
ワイヤーが付いていてもフロスや歯間ブラシは使う事が出来ますので、虫歯や歯周病になる心配はありませんが、長期保定の患者さんは、最低でも 3年に 1度はチェックに来て頂いております。
時々、ワイヤー切れや脱落などで急患で来られる方がいらっしゃいますが、通常はその対応も無料で行っています。
患者さんの中には、チェック料が欲しいから外してくれない、と思っている人もいるようですが、正直なところ、長期保定は医院にとって大赤字ですので、本当は前述のように 2年で外してサヨウナラ、戻ったらまた再治療を再chargeで行った方が助かるのですが、折角私のところに来てくれて、何年も通ってくれて、高いお金を払ってくれた患者さんに対して、そのような対応は私には出来ませんので、長期保定は完全にボランティアで行っています。
この LTSOA、矯正歯科長期安定研究会という会は、この永遠のテーマである長期安定に関する研究会で、今回が設立されて第1回目の開催です。
「学会」と名乗るには所定の条件があり、これらを満たさない限りは正式には学会とは認められません。
ですので、通常は「研究会」として発足し、実績を積んでから学会に昇格というステップを踏みますが、中には有志が募って勝手に「日本○○矯正学会」などと名乗っているものもあります。
本研究会は、大学の教授も発起人となっており、研究会としてスタートしています。
開催の御知らせが来た際に、「これは絶対に参加したい」と思い、即申し込みました。
実際に参加してみて、初回であるのに200名ほどの先生が集まりました。
第1回学術大会、大盛況でした。(写真は小川先生から拝借しました。)
最近の学会の傾向として、演者が講演時間を守らないために質疑応答の時間が無かったり、時間はあっても雰囲気的に挙手発言しにくかったり、ということが多いですが、本会は参加人数は多いものの、at homeな雰囲気で、私は 3度ほど質問させて頂きました。
質問中のワタクシ。(写真は小川先生から拝借しました。)
症例展示もあります。皆さん熱心に読まれています。(写真は小川先生から拝借しました。)
次期大会は、2024年12月15 日、秋葉プラザで開催の予定です。
私は講演を依頼され、一応、お受けしましたが、もしかすると、辞退するかも知れません。
理由は、登録は先着200名限り、とのことですので、演者も登録が必要かどうか問い合わせたところ、演者も参加料を払って登録、懇親会も参加費を支払ってくれとのことで、理由は会にお金がないからとのことですが、特別講演を含めて演者 6名、たった 6万円のお金が工面できない筈が無いわけで、他に理由があるならばハッキリと言えば良いと思います。
講演するということは、診療時間を削って、寝る時間を削って準備するわけですから、足代も謝礼もない上に参加費用も懇親会費用も支払えというのは、演者に対して失礼だと思うのです。
私は過去30年ほど、ALOA、ESLO、CEO、WSLO等々、海外の学会や大学で講演してきましたし、講演以外にCourseも行って来ましたが、謝礼を要求したことはありませんし、金目当てでやっているわけではありません。
ただ、最低限、参加費は無料、ガラディナーは招待、これは講師に対する最低限の表敬であり、礼儀であると思うのです。
お金が無いとのことですが、参加費 1万円だと 200名集まって 200万円ですが、2万円だと 400万円、3万円だと 600万円になりますから、懐事情が全く違ってきます。
第1回はインパクトと内容から考えて、仮に 2万円取っていても同じ数は集まったと思います。
2024年の参加費は既にネットで公開しているので今さら値上げするわけにもいかないでしょうが、講演するということは、それなりに経費もかかり、診療を削って、或いは寝る時間を削って準備するわけですから、それなりの対応が出来るようにプランニングすべきではないかと思います。
例えばアメリカの著名な先生をオンラインでライブ公演して頂き、会場で流す。
オンラインなら講師の航空券もホテル代も必要無く、薄謝で済みますし、十分に集客力はある筈で、時差を考えても十分に実現可能な筈です。
参加費も、例えば、入会金 5000円、参加費は会員 15000円、非会員 25000円、と設定すれば、非会員で参加するよりも入会した方が安くなり、より多くの入会者を獲得できる筈ですが、こういった工夫もされていません。
繰り返し書きますが、僕はお金目当てで講演などやっていませんし、要求したことなど 1度もありませんが、礼を失することは大きな問題であり、折角面白い会が出来たのに、その芽を摘むような事にならないようにと思いましたので、大会長に連絡させて頂きましたが、軽く遇われたというのがその理由です。
どんな学会でも研究会でも、座長として壇上の座長席に座るということは、座長としての役割と務めがあり、大会長には大会長としての責任と勤めがついて回るもので、名誉以外に義務や責任がついて回ると思うのですが、、。
ひろ矯正歯科では 現時点では アライナー矯正(一般の方はマウスピース矯正と言いますが、私達はマウスピースという言葉は使いません)は行っていませんが、過去の院長日誌に書いたように、近年、アライナーはソフト、ハードの両面で著しい進歩を遂げており、アライナーは近い将来、世界中の矯正治療の大部分を占めるようになると思われます。
12月2-3日、日本アライナー矯正歯科研究会が 東京ポートシティ竹芝で開催されましたので、参加してきました。
翌日は後述の Swedentisに参加のため、1日のみの参加でした。
Meetingは、会長の尾島賢治先生の講演から始まり、その他多数の先生が講演されました。
アライナー矯正の最大の問題点は、矯正歯科の基本的知識が無い歯科医師が安易に手を出し、泣きを見る患者さん(=被害者)が多いということです。
長野県内にもアライナーを始める先生が増えていますが、患者さんの皆さんはあとで泣きをみないよう、やめた方が良いと思います。
先日も県内の歯科医院でアライナーを 2年やっているが、治らないと相談に来られた患者さんがいましたが、お口の中を見て絶句、現状を正直に説明して、キチンと治したいなら、キチンと検査・診断をして、1からやり直す必要があるといことを御説明しました。
アライナー矯正を希望する方は、県内の歯科医院は避けて、尾島先生のクリニックまで通われた方が良いと思います。
翌日、12月3日は東大安田講堂で Swedentisなる学会が開催されましたので、参加してみました。
日々診療していると、いろんなセミナーや学会の案内が来ます。
殆どは右から左ですが、あまりにも内容がアレかな、というものは参加してみることがあります。
この会は、光加速矯正というのを詠っており、矯正治療中の患者さんにある種の光を当てると歯の移動が速くなるというものです。
自分の知っている限りでは、そのようなことは evidence baseで研究された報告がないので、試しに聞きに行ってみましたが、、、アレでした。
ただ、会自体を全否定するものではなく、含嗽剤や齲触治療薬などは実際に有用だと思われましたので発注し、私自身が試しに使ってみています。
良ければひろ矯正歯科でも患者さんに用い、患者さんに販売する、かも知れません。
東大安田講堂と赤門です。ありがたさを感じました。
今年も松本歯科大学から御指名を頂き、歯学部4年生の特別講義をさせて頂きました。
まずは、他では見られないであろう舌側矯正の治療例を数症例紹介し、巷で言われている「舌側矯正は治療期間が長く、ちゃんと治らない」とか、「喋れなくなる」、「上顎はリンガルでも良いが、下顎はラビアルの方が良い」等々が如何に間違った情報であるかとうことを立証し、矯正歯科の目的や効果についてお話しし(学生さんには難しすぎるため、同席していた医局の先生達のためにお見せしました)、昨年同様、皆さんは何故歯科医師になるのか、どうゆう歯科医師になるのか、という質問をしました。
というのは、歯科医師のあるべき姿からかけ離れ、患者さんを食い物にして、暴利をむさぼる最低な歯科医師が目に付くからです。
先日の銀座の何億円も持ち逃げした歯科医院は論外ですが、こういった話は大都市に限ったことではなく、長野県内にも「あなたの口をきちんと治療するには、最低でも 1000万円は見ておいてください」と平気な顔で言う歯科医師が実在します。
保険診療では自分の理想の治療が出来ないから自費で診療される先生は理解出来ますが、保険の効く筈の歯周病治療で 1000万円!
患者さんの中には家を売って支払ったという人もおり、医療法人というより宗教法人かと言わざるを得ません。
その歯科医師は、某スタディークラブの会長をしており、御自身の治療には、たいそうな自信があるようですが、海外のレベルから見ると全然大したことはなく、自信では無く過信、典型的な悪徳歯科医で、治療以外の面でも、人を平気で馬鹿にする、仁義をわきまえないなど、人間性にも問題ありで、そんな人間は歯科医師を辞めて欲しいと思います。
講義では、そのような実例を挙げつつ、矯正歯科は今後どうなるのか、特にアライナー(いわゆるマウスピース矯正)が世界中で急速に拡大しつつあることで、矯正歯科に対する moralと philosophyの欠如した歯科医師が増え、取り返しのつかない結果になって泣きを見る患者さんが爆発的に増えるということ、そして wire bendingが出来ない、診断も出来ない「ナンチャッテ矯正専門医」が増え、本物の矯正歯科専門医の存在そのものが危ぶまれる時代になるであろう、ということについてお話させて頂きました。
私自身は今まで、relapse症例など、Bracketを付けるよりも Alignerの方が適していると判断した症例には in houseで作製して使っていましたが、基本的には Alignerを否定してきました。
それは Alignerそのものの限界というより、矯正の知識が全く無い歯科医師によって信じられないようなトラブル症例が Alignerによってたくさん作られてきたということが一番大きな理由です。
Alignerそのものについては、最近の Software、Hardware、Materialの改良と、尾島先生をはじめとする Aligner expertの存在によって、やるべき人が、キチンと手順を踏んで、症例を選んで行えば、素晴らしい結果が得られ、今や multi bracket法のみが矯正の治療では無いと思っています。
但し、繰り返し書きますが、Alignerを使うにしても、矯正学の基本的知識が必要なことは変わりなく、先日初診相談で来られた患者さんは、他医でアライナーを2年ほど治療しており、歯根は骨から飛び出し、臼歯関係は狂い、上顎前歯は前突して著しい horizontal open biteになっており、本当に悲惨な状態でした。
アライナーに限らず、矯正治療では、金銭面でのトラブルも多いです。
治療を開始する前に全額前金で払わせておき、一旦支払ったお金はいかなる理由があっても返金しませんという念書を取る。
そんなのは歯科医師を辞めて、詐欺師か暴力団にでもなったほうが良いと思います。
こんなクソ歯科医は、自分が逆の立場なら納得して支払うのでしょうか?
絶対に支払わないと思います。
私が大学を卒業した当時は、矯正専門医というのは希有なる存在で、矯正歯科と標榜することも認められていませんでした。
一般歯科で開業すると、開業直後からたくさんの患者さんが押し寄せて大忙しということが多いですが、矯正専門開業は、立ち上げの数年間がまさに地獄の苦しみで、どんなに苦しくても一般診療には絶対に手を出さないぞ、死ぬまで走り続けるんだ、という、本当に想像を絶する覚悟と努力と耐力が必要でした。
なので、医局の先輩達も矯正専門で開業する先生は少なく、一般歯科・矯正歯科、あるいは小児歯科・矯正歯科で開業する先生が殆どでした。
今回私が講義をしたのは 4年生ですが、彼らは来年になると臨床予備実習があります。
私達が学生の頃は、登院する前にポリクリというのがあり、無事ポリクリを終えると臨床実習で大学病院に登院して患者さんを配当されるのですが、毎日診療前に診療計画書をインストラクターに提出してOKを貰わないと患者さんを診させて貰う事は出来ませんでした。
今ではカリキュラムが変わり、臨床実習前には、CBT、OSCEという試験があり、これらを通過しなければ、進級は不可、留年になります。
これらの試験は国が行っているものですが、学生の人生を左右する重要な節目であるにもかかわらず、非常に大きな問題がいくつもあります。
まず CBTに関してはパソコン相手であるため、試験官の主観が入ることは無いのですが、OSCEは以下のような重大な問題があります。
などなどです。
1は、非常に重要なポイントで、例えば、私が試験官を務めていたヨーロッパの指導医の試験は、完全に Blind、Anonymousで行われており、試験官からはその Applicantが何処の誰なのかわからない、受験する Applicantからも、自分を評価する Examinerが誰なのか、わからないようになっています。
さらに評価は 2人の異なった試験官が1人の Applicantの採点を行い、お互いの採点結果を照らし合わせて、最終的に合否が決められます。
合否が決まった後、Examinerと Applicantは対面して、Examinerは Applicantに合否を告げ、採点の基準について説明、これは何点減点である、これは何点加点である等々の Feedbackを行います。
したがって、何故不合格なのか納得のいかないまま終わり、とか、友達だから合格させた、ということはありません。
ところが、日本で行われている OSCEは臨床想定の試験が対面で行われており、最も大きな問題は、その試験官と受験する学生は、座学や基礎実習などで何度も顔を合わせていて面識があるということで、試験官を務める医局員が、「この学生は気に食わないから落してやろう」と思えば簡単に落とせる、逆に部活の後輩など、自分のお気に入りの学生に対しては、ミスがあっても見ぬふりをして合格させることが可能であるということです。
つまり、仮に全国屈指の優秀な学生が毎日 OSCE対策のトレーニングを積み、本番の試験で何も問題なく終えたとしても、試験官がコイツは落してやろうと思えば簡単に落とせる、試験官次第でその学生の人生が変えられる可能性がある、ということです。
試験要項では、試験の様子はビデオ撮影され、いつでも再審査が可能であるように詠われていますが、実際にはそのようなことは無いようです。
試験結果を公表しないという理由は、問題漏洩の防止のため、とされていますが、結果の公開非公開と試験問題漏洩とは無関係であり、しかも試験官は、結果が非公開でクレームは一切受け付けないということを知っているので、不当な評価で学生を不合格にしたとしても、それが立証されることはない、つまり試験官の好き放題、やりたい放題がまかり通っているという事です。
これらは医学部のOSCEに関する投稿です。
受験する学生側にはいろいろな制約があり、納得出来ないルールがいくつも存在するのに、試験官は好き放題、やりたい放題で、試験官を評価するシステムは皆無なのです。
この問題をクリアして、OSCEを正当かつ公平な試験にするには、
等々でしょうか。
そもそも医学部、歯学部の一般教養以外の基礎実習、臨床実習などの学生教育は、教授でも教員でも何でも無い「ただの医局員」によって行われており、その医局員達は教育に関するトレーニングは何一つ受けていないということ、その連中の中には、自分が学生時代にインストラクターに虐められてとても辛い思いをしたから、今度は自分が学生を虐めまくってやろうと考えているような、人格に問題のある者もいるということです。
なので、学生が徹夜で必死で何十枚も書いてきたレポートを学生の目の前でビリビリに破いて大声で怒鳴り散らしたり、学生の作ってきた製作物を学生の目の前でゴミ箱に投げ捨てたり、学生のカバンを足で蹴っ飛ばしたりする医局員がいるのです。
私が学生の頃、同級生が保存科のインストラクターから連日ひどい虐めを受け、その同級生は「あの野郎、卒業したら絶対殴ってやる」と言っていました。その同級生は卒業式の日に本当にそのインストラクターをぶん殴って、殴られたインストラクターはロビーで腫れ上がった顔を冷やしていたのを思い出します。
海外の歯科大学では、インストラクターが学生の評価を行うだけでなく、学生もインストラクターの評価を行い、評価が低いインストラクターや、クレームが多いインストラクターは大学から追放されます。
日本の全ての歯科大学でも、1日も早く学生が教員を評価できるシステムが導入され、不適切なインストラクターが歯科学生の夢や希望を奪う事がなくなるよう、心から希望します。
学生諸君、泣き寝入りしないで、みんなで力を合わせて闘え!
附:上記は、松本歯科大学のことではありません。一般的傾向として、私立大学は学生に優しく、国公立大学では上記のような傾向が強いようです。